○雑誌を読んで
「若松さんですか。今月号の『まち・むら』という雑誌を読んだのですが、人間牧場はどの辺りでしょうか。アポイントもなしに失礼とは存じますが、近くを通ったものですから一度見学したいと思いまして・・・・」。運良く今日はお盆休みを決め込んで家にいて電話を取った私に、「お手間を取らせても何ですから、場所さえ教えていただければ自分で訪ねてまいりますので」と言われるのですが、「残念ながら地図もなく、一人で行くと迷うことになりますので、私がご案内します。いまどちらにいますか」。「はいしもなだ運動公園の入り口にいます」。「じゃあ9時半にそこでお会いしましょう。ところで人数は」。「はい私と妻です」。「そうですかじゃあ早速そちらへ向かいます」。一昨日までの灘町集会所の宿泊者が出した膨大なゴミを、自治会長としての役目上ゴミ収集場所に出さなければならず、朝早くからその対応に追われ、ほっと一息ついた時間だったので、快く出かけて行きました。待ち合わせの場所に着くとキャンピングカーには大きな犬2匹と奥さんが同乗していました。残念ながら道が工事中で通行止めと書かれていて、キャンピングカーにはちょっと無理な道幅なので奥さんと犬2匹は車の中でお留守番という結果になってしまいました。
聞けばキャンピングカーで四国八十八ヵ所を回っているとのこと、香川県善通寺市のれっきとした現役課長さんで、盆休みを利用して各地をラリーで回っているそうですが、初対面とは思えぬ奥の深い方で、波長が合って色々なことを話し合いました。特に私の生き方に興味があるらしく、ついでにわが家までやって来て煙会所や海舟館、夕観所を見学する念の入れようで、「昇る夕日でまちづくり」と「今やれる青春」という2冊の本まで買っていただきました。
最近は団塊の世代が何かと話題になっていますが、その殆どの人たちが定年後どのように生きたらいいのか考えぬまま社会に飛び込んで来つつあるようです。昨日も一つ年上の先輩の奥さんに会いましたが、奥さんの話だと「退職後は釣りに凝って仲間と遠くへ釣りに出かける日々」だそうです。奥さんお話を続ければ、「もっとましな生き方ができないのでしょうか」とも言っていました。私は奥さんに「やることがあることは素敵なことですよ」とたしなめました。奥さんの不満は「私がこうしてパートに出て働いているのに、別に金儲けするでもなく、『年金は俺のもの』と言わんばかりに釣り三昧をするので腹が立つ」らしいのです。「そこへ行くと若松さんは偉いですね。うちの主人に若松さんの爪の垢でも煎じて飲ませたい」と大笑いをして分かれました。
この課長さんと話したのですが、「世の中の乱れの大きな原因はみんなが豊になり過ぎたためではないか」ということでした。先日一俵入魂でお馴染みの高知県南国市の川村一成さんの話を紹介しましたが、彼が言うように「ほどほどな貧乏」が世の中には必要なのかも知れません。豊だと人に頼らず生きてゆけるし、人を気にせず生きていけるのです。人間は人とともに生きると人の恩に感謝が生まれ、感謝が新しい人の世話へと発展してゆくのです。私は「属地での生き方」を推奨しています。ふるさと運動もその一環で、ふるさとを愛する気持ちがあればゆがみあうこともなくみんなが仲良く日々暮らせるのです。子どもが育つ、お年寄りが穏やかに暮らせる地域は、最早なきに等しくなりつつあります。阪神大震災や新潟地震を見れば一目瞭然で、日本のかつてのよきコミュニティを復活しなければ、今話題の映画「日本沈没」になるかも知れません。そのためには、人間何のために生きるのか、人間はどう生きたらいいのか真剣に考え、自分自身の生き方をしっかりと考え生きて行かなければなりません。
「飛び込みで 人間牧場 やって来る 今日もいい人 知恵を授けに」
「弘法は 八十八ヵ所 巡る旅 そのつれづれに 何か学べと」
「暑いねと 交わす言葉で 盆が来る 寒いね正月 半年後には」
「見上げると 入道雲の 湧く空に トンボ早くも 秋の気配が」