○遠来のお客様
昨日の昼頃、ひょっこり外国人がわが家へやって来ました。外国人といっても日系2世の方なので外見は日本人と変わりはないのですが、たどたどしい日本語を聞くとやはり外国人だと思うのです。彼女は10年前に双海町へ英語の講師として赴任したキャロリン岡部さんなのです。しかし何という律儀な方でしょう。双海町での在職は一年延長して3年間でしたが彼女の日本文化に学ぼうとする感性にはただただ驚くばかりで、随分学ばせてもらいました。彼女はわが家の親父と懇意で度々親父の所へやって来ては食事を食べたものです。質素な親父の日本食を嫌がりませず食べ、時には親父と二人でビールを飲んで楽しんでいたようです。私も役場に勤めていたので、彼女と飲みに行ったりもしました。彼女はこの町を離れて今は外資系モルガン・スタンレー証券株式会社という、恵比寿ガーデンプレスタワーにある会社に勤務しているそうですが、間もなくアメリカの会社へ転勤するので夏休みを利用してやって来たのです。
今でも覚えていますが、彼女が双海町へやって来たのは丁度この頃だったと思います。夏祭りの準備でみんなで福撒き用の餅つきをしていた場所で彼女と出会いました。それからの彼女の活躍は目覚しく、ETとして中学校の生徒からはキャロリン先生と慕われ、地域の人にも気楽に話す性格からおじいちゃんやおばあちゃんにも人気がありました。
彼女が凄いと思ったのは、日本の祭りを見たいと、東北の3大祭りを全て見に行ったことです。また四国八十八ヵ所も自転車ですべてお参りしましたし、地元の方の結婚式には振袖姿で参列したことでした。私たち日本人は東北の祭りも見たいし、四国八十八ヵ所を自転車にしろ回ってみたいと思うひとは多いのですが、忙しさにかまけてそんな行動はとらないのです。私は彼女の勇気ある行動に感心しながら、日本人として日本文化の知的浅さに落胆し、その後彼女に触発されて色々な研鑽をまだまだ浅いものの積みつつあるのです。昨日の出来事もそうです。88歳の年老いた親父を忘れることなくわが家へ訪ねてくれました。
親父の昨日の喜びようは相当なもので余程嬉しかったのでしょう、その事を今朝も私に話してくれました。「こんな年老いた老人の顔を見にやって来てくれた。誰が来てくれるか。感心なものよ」というのです。
私は「体が不自由だし肌着なので」と渋る父親の意見も聞かず、記念にとツーショットで記念写真を撮ってやりました。歳をとり狭い社会にしか生きていない親父にとって、外国人の友だちはキャロリン・岡部さんただ一人ですからこれはよい記念になったことでしょう。
夏が来れば思い出すキャロリン・岡部さんは元収入役のお家に逗留し、今日双海町を経つと聞きました。親父は「何かお土産を」と思ったそうですが、私も昨日は四万十市へ出かけねばならず間に合いませんでした。キャロリン・岡部さんから名刺をいただき、私も名刺を渡したのでインターネットでのやり取りも可能なので、これからもデジタル交流をしたいと思っています。
何はともあれ、親父にとっては久々に嬉しいニュースでした。
「律儀にも 昔忘れず 訪ね来し キャロリン先生 親父感激」
「もう二度と 会えぬと思う 人に会う 悦び余り 思わず涙」
「あどけない たどたどしかった 日本語も 今はベラベラ あんた外人?」
「英語など 喋れぬ父は サンキューで 心通じて フレンドつくる」