○商品開発
物の豊かさを実感するように、どのお店を覗いても様々な商品が所狭しと並べられています。たった一つのテーマなのにこんなにも種類があるのかと思うほど種類が多く、選択するこちらの方が迷ってしまいます。でもそんな中から売れ筋として消費者に認知されロングセラーになるものはごく小数で、その殆どは売れることもなく廃棄されるのですから厳しいと言わざるを得ません。
私も現職時は公務員でありながら食べ物を加工する商品開発に携わった苦い経験があります。どんなに自信を持って作ったものでも、売れないとただの製品で商品ではありません。製品を商品にするには食材の品質と食材を加工する技術が必要で、これが本物であるということが最低条件となります。もしこの段階で品質を落としいい加減な技術だと門前払いが落ちでしょう。次にこの製品をどのように美しくしかも目を引くようにするのか、パッケージやラッピングといったお化粧が必要です。品質や技術それに容器への先行投資は売れなかったらどぶ川に捨てるようなものですから、余程売れる自信がないと勇気のいる決断です。
ここから始まるマーケティングはまさに奥の深い、それでいて重要な「売る」ことへの挑戦なのです。
私はこれまでズブの素人といわれる漁協のおばさんと一緒にじゃこ天の商品化に取り組みました。結果的には5500万円のヒット商品に育てる事に成功しましたが、本物と真心だけでラッピングやパッケージといったお化粧を省きましたし、マーケティングもシーサイド公園に来ないと食べれないという差別化によって行列のできるお店を作り上げました。しかしこの場合マーケティングで難しかったのはどのようにしてお客に食べさせるかという難題でした。私はふと今の若者がハンバーグを食べる姿を思い浮かべました。これまでの常識は「歩きながら食べたらお行儀が悪い」でしたが、「じゃこ天を串に刺し歩き名が食べる」という非常識を考えこれを若者の食文化、ファッションに変えたのです。不思議なもので今まで売れなかったじゃこ天が売れ始めたのです。おばさんの作る本物と、おばさんの方言丸出しの真心に私の常識を非常識に変えた歩きながら食べるをプラスし、しかもここだけしか買えないという差別化が夕日で集客した人々に定着していったのです。私は夕焼けソフトクリーム、夕日の望遠鏡、夕日日コーヒーなど常識では考えられないアイディアで商品開発を行いそれなりの成果を収めることができました。
昨日風呂屋で、味噌屋の若い社長さんに会いました。ギノー味噌といって地元では有名な会社の2代目社長さんです。この会社は創業者の先代が苦労して育てた会社ですが、先代が出版した本によるとまるで世界の松下電器をを作られた松下幸之助さんを髣髴するような厳しい苦労をさえたようです。その頃の田舎では私の家がそうであったようにどの家も味噌は祖母から母へ、母から嫁へと伝承されて各家庭で作られていました。先代には先見的な読みがありました。「やがて味噌のような手間暇かけるものは各家庭では作らなくなる」と。その読みは的中しギノー味噌は今の隆盛を見る事になったのです。でも普通はここまで、底から先は甘やかされて育った2代目が身代を潰すのです。でもギノー味噌は優秀なやる気のある若い経営者に引き継がれ、味噌を使った郷土料理「さつま汁」を世に出しヒットしました。昔お湯をかけたらできる味噌汁を永谷園が出した時、世の中はアッと驚きました。パンとコーヒーが主流の若い世代は、味噌汁を飲みたくてもだしをとって味噌をこす面倒な味噌汁など作らない風潮を逆手にとって大流行したのです。
風呂屋での出会いはお互い裸だったのですが、先日生協での私の講演会で顔を合わせていたこともあって、多いに盛り上がりました。若い社長から聞いた話ですが、新商品の県コンクールで25の応募の中からギノーが出品した「鯛めし」が堂々のグランプリに輝いたと言うのです。私は面白いビッグチャンスだといいました。私だったらコンクールグランプリの冠をつけて売り出します。ただし売り出すだけでは芸がありません。集客のある場所で新製品の普及宣伝を目的とした「ギノーエプロンクッキング教室」を県内10箇所で主婦を対象に開きます。その時はさつま汁も一緒にします。さつま汁も鯛めしもどのようにすれば上手くできるかが売れるカギなのです。その様子をアンケートして次は、「ギノークッキングコンテスト」を仕掛けます。味噌を使った料理を応募してもらうのです。優秀な作品のレシピはインターネットで流すのです。ギノーがバーチャルの世界でも話題になること間違いなしです。
おっと、これは私のブログなのに、忘れてギノーのブログのようになってしまいました。この話はなかった事にしてください。
追伸 私は風呂屋で面白い話と感動の光景を目にしました。面白い話し、それは自分の5人の子供を広田村へ山村留学させている話しでした。私は無人島へ4人の子どもを連れて行きました。同じような思いです。感動の光景、それは足腰の弱った先代の手を引いて風呂好きな先代を風呂に入れている2代目社長の優しさでした。
「先代が 苦心の会社 引き継いで 隆盛保つ これぞうるわし」
「ギノー(技能)にて 作りし商品 ヒットする 何がミソ(味噌)だろ 時代先読み」
「じゃこ天も 元はと言えば 非常識 数年すれば これが常識」
「鯛めしを 喰いたいけれど 作れない そんな疑問に 価値ある挑戦」