○異動内示
春は異動の季節です。そろそろあちこちから異動の便りが届き始めました。異動に縁がなくなった自由人の私としては、新聞に出ている異動内示の細かい文字を目を細めて見る程度ですが、異動内示を知らされた当の本人は今頃どんな気持ちだろうと思うと、何かしら複雑な気持ちになります。現役の頃の私は余り異動に縁のない人間でした。最初の教育委員会は13年も異動なしでした。その後産業課で4年、企画調整室で9年、地域振興課で9年、教育長として2年といずれも長い勤務で異動は35年間で4回しか経験しませんでした。しかもその異動は役場内ですから一階が2階になった程度で、トラックに積んでの大移動など経験したことはありません。しかし異動の度に短かれば短く長ければ長い心情で内示の中に自分の姿を追っていたように思います。
異動は一部の人がその人の顕在能力を見て適当にやるのが正直なところです。私も企画調整室で人事異動の内示作りに関わったことがありますが、その人の能力の適材適所よりも勤務年数の方が優先され、1人を動かせば3人が動くといった適当な語呂合わせなのです。でもそんな語呂合わせの異動内示でもその人にとっては一生を決める一大事ですから、栄転や左遷と思う気持ちは良く分るのです。
昨日息子から異動の内示が出たと電話連絡がありました。息子は採用試験に合格し研修のために半年間学校に入っていました。この3月24日に卒業し晴れて新任地に赴くのですが、自分の希望が受け入れられたらしく弾んだ声で「明日荷物の移動をするからトラックを用意して」というのです。単身赴任でしかも官舎暮らしですからそんなに荷物もないのですが、今日は昨晩遅く帰った息子の引越しを手伝います。
相前後して馬路村の木下君から異動内示の電話がありました。総務課から異動して住民課のような所で村民の健康問題に取り組む部署だそうです。お酒に酔って電話してきた電話の声で彼の心情は読み取れました。村づくりに情熱を燃やしてきた彼の仕事は意思半ばで終わりそうです。異動先は高知県で一番村民一人当りの医療費が多いので、その仕事を任せられるというのですが、先々の不安や私たちとの距離が遠のくのではと心配する心の動揺は声に現れていました。「あなたは村長に雇われているのではない。村民に雇われているのだ。そのことを忘れないように」と彼を励ましました。
夕方私の携帯電話に着信表示、電話をかけてみると大野事務局長からフロンティアメンバーの異動内示の情報でした。佐賀山さんが武道館から今治の土地開発のような所へ異動らしいのです。彼の職場は指定管理者制度の導入によって県職員が撤退するためのやむを得ぬ異動でしょうが、今日は彼に連絡を入れたいと思っています。
こうして行く人来る人、去る人それぞれに人生の人間模様を描きながら今年も異動の春は穏やかに過ぎてゆくのです。
「内示出た 弾んだ声と 沈む声 人の運命 誰が決めるか」
「息子から 任地決まった 知らせ来る 今日は車で 引越し手伝い」
「支所縮小 機構改革 するという さらに寂れる 役場界隈」
「お粗末な 話で内示 遅れ気味 得意な顔で 上から下へ」