○貝殻の土産
私のように年中旅をしていると、手荷物を出来るだけ少なくするため行った先々でお土産を買うのが煩わしくて殆ど買いません。それでも相手の方が地元の特産品をと気を使って手土産に持たせてくれます。最近は行く前や後に土産を送ってくれたりするものですから恐縮この上ありません。
先日も那覇や石垣島へ出かけましたが、滅多に沖縄を訪ねない人は、市内で、空港で、行った先々でと買うわ買うわ、気がついたときは手に持ちきれないほどで、結局は宅配便で送るという始末です。私など買うのはお茶ぐらいなものですから財布の中身も余り減りません。
今度の旅で珍しい物を手に入れました。分科会の現地研修で石垣島の美しい海岸に薬草を探しに行ったのですが、その折珊瑚の死骸が堆積する海岸でしゃこ貝の貝殻を見つけました。参加者の殆どは石になった珊瑚の珍しい形をした物を探していましたが、私はしゃこ貝を3個見つけたのです。これが大中小の3点セットのように中にきっちり納まるのです。「これが本当のサンセットだ」などとジョークを言いながらみんなに見せるととても羨ましがられましたが、私はこれをビニールの袋に入れタオルに巻いて背中に背負ったナップサックへ入れて持ち帰りました。ここだけの小さい声の話なのですが、本当は海岸の石や貝殻はたとえ拾って持ち帰ることは出来ないのです。(この話は絶対言わないように頼みます)
金で買わないしゃこ貝の土産を見た妻は「まあ綺麗」と驚いた様子でしたが、興味がないのか私の書斎の机の側にドンと置いて、飾ろうともしないのです。海舟館にでも展示しようと思っています。
観光地へ行くと殆どの建物に落書きが見られます。イースター島のモアイ像に落書きをした日本人の恥じる行動が叱責されたのは記憶に新しい出来事です。日本人は何故か旅の思い出の証を何かの形で残したいじんしゅなのでしょうか。勿論私もその一人かもしれないと、持ち帰った貝殻を見て苦笑しています。
「しゃこ貝の土産背中に帰り来るシナ海漂うドラマとともに」
「思い出は心に留め持ち帰るこれが土産と自分に言って」
「泡盛は?届かぬ土産要求す友の一言心にグサリ」
「片隅に夕日あるのか三セット座布団一枚大き声飛ぶ」