○3つの実行
私は35年間の公務員生活を比較的部下の少ない部署を歩んできました。教育委員会(公民館)、産業課、企画調整室、地域振興課、教育委員会と5つの部署でしたから、異動もそんなに多い方でもありませんでした。最後の教育長という職は学校や給食センターなど、部下といえるかどうかは分かりませんがそれなりの人数がいましたが、地域振興課など課長職の自分以外まったく部下のいない、日本で一番小さな課だと自慢するくらい部下ゼロの職場でした。
したがって課長補佐職10年、課長職12年は部下の管理という職にありながら、余り部下の数はいませんでしたから、上下の人間関係で悩んだ記憶はありませんでした。
そんな私に先日、管理職研修セミナー講師を依頼され出かけました。講義が終わって質問形式になった時、ある課長さんから「私は出先を含めると30人の部下を持っています。最近の人間は組織という縦社会を認識することもなく、世話を焼かせて困ります。部下の操縦方法を教えてください」と質問されました。
最近はこんな課長が多いと思いつつ、質問の中にある二つのことを前置きしました。まず「組織は縦社会」です。確かに命令系統はピラミッドであり課長が頂点という意識は必要でしょうが、人間関係は縦軸と横軸とで成り立っていることを認識せねばなりません。課長の指示が補佐や係長という中間管理職にどう反映されているのか、組織には2層3層、時には4層の組織が内蔵されていることを考えねばなりません。さらに質問にあった「世話を焼かせる部下の操縦方法」とはいかなるものか、人は服従操縦の対象物ではなく、信頼されると動くものであることを話しました。
その上で、私が係長として始めて部下をいただいた時にやった3つの方法を話しました。「仕事を好きにさせる」「職場を好きにさせる」「人間を好きにさせる」でしたが、部下は真面目な性格でこの3つを忠実にこなし、今は人もうらやむいい課長さんになっています。全ての人間がこう上手くは行きませんが心がけとしては必要で、「仕事」「職場」「人間」のどれかでもクリアできればそれを伸ばして、それを武器にさせながら育てれば必ず育つものです。
「職場の人間関係も平職員から見た社会と、管理職員からみた社会とではまったく逆の関係ですから、自分が部下だった頃のことをもう一度思い出して努力してください」と結びました。先日その課長さんから一枚のハガキが届きました。「いいアドバイス有難う」でした。
「俺課長俺の言うこと全部聞けそんな課長の言うこと聞かず」
「好きでない人はあなたを嫌いです好かれるコツは好きになること」
「酒飲んで課長の悪口言った後ここだけ誰にも口止めしたが」
「これをしろ命令されると頭来る君しか出来ない言われ進んで」