人間牧場

〇自家製コロッケ作り

 季節が晩秋から初冬へと移るのを実感するのは、時折強く吹く北寄りの季節風です。晩秋には北東の風がよく吹きます。私たちの地方では北東の風のことを、漁師用語で「くだりの風」と呼んでいます。昔から「くだりの風と夫婦喧嘩は宵に凪ぐ」といわれていて、朝陸から海に向かって吹く「あらせ」が止むと、くだりの風が吹き始め、夕方までまで強く吹いたくだりの風は夕方になると、まるで夫婦喧嘩のようにピタリと止むのです。そんなことを雨が降るまで繰り返すのですが、雨の降った後冬の訪れを告げるように吹くのが地元で「西」と呼ばれる季節風です。先日も雨を伴った西風が吹いて、わが家の柿の木はいっぺんに葉を落として裸同然になってしまいました。木の枝に残った取り残しの柿の実が、まるで木守柿のようになって、時折やって来るモズの餌食となっているのです。

 昨日は息子と親父と私の3人で、庭に積った落ち葉を掃除しました。熊手や箒を使ってかき集め、それをキャリーに入れて畑の隅の焼却炉へ運び焚き火をしました。雨に濡れていたものもあって煙がたなびきましたが、集めていた天ぷら油の古いのをかけてやると、火は勢いを増しすっかり綺麗に処分ができました。
 その後倉庫に囲っているサツマイモを取り出し、妻に素焼きの焼き芋器で焼き芋を焼いてもらいました。いやあ実に美味しく焼きあがり、家族全員で食べましたが、その後わが家ではおならの大合唱になって、大笑いをしました。これもささやかな家族の団欒でしょうか。
 わが家の廊下の片隅に北海道の友人から送られてきたジャガイモが置かれています。腐ったり芽が出ないようにするために冷たい場所に置いているつもりなのですが、冷たい場所と言っても北海道の気候とは全然違うため、ジャガイモの芽が既に動いていて、早く食べないといけないため、思い切ってコロッケを作ることにしました。

 妻がジャガイモを洗って茹でて皮を剥き、つぶして炒めたひき肉と混ぜて俵状の団子を作り、小麦粉をまぶしました。私はそれを溶き玉子で濡らしパン粉をつけながら、形を整えて俵上にするだけなのですが、これが柔らかいため意外と難しく、自分の不器用さや日ごろ料理を手伝っていないことを悔やみました。それでも30分ほど手伝って、何とか下準備ができました。裏のガス台で揚げるのは若嫁の役割です。妻が作ったトンカツと鶏のから揚げ、タマネギやニンジンの野菜かき揚げ天ぷら等多彩な揚げ物が、若嫁の手によって次々と揚げられましたが、私も自分が少しだけ手伝った揚げ立ちの熱々コロッケを、2個もつまみ食いさせてもらいました。いやあ絶品でした。揚げ物類は揚げたてが一番美味しいと聞いていましたが、家族全員がつまみ食いでお腹がいっぱいになりました。

 ほんの束の間の日曜日、しかも示し合わせたようにみんなが休みなので、泊まりに来ていた外孫の尚樹を含めて家族水入らずの一家団欒でした。妻は揚げたコロッケはタッパに入れて、子どもたちや近所にお裾分けをしたり、冷凍保存したようですが、解凍してレンジで暖めれば熱々のコロッケが当分楽しめそうです。
 「男子厨房に入るべからず」の古い時代に育った私は亭主関白で、皿洗いや後片付けも、ましてや魚の粗調理以外は殆んどしない私にとって、コロッケ作りに参加したのは初めてでしたが、中々面白かったというのが感想です。妻も大いに喜び次もまた宜しくと言われましたが、やはり料理は妻の作ったものに限ると少しお世辞をいい、今後も余り手出しをしないつもりでいます。

  「少しだけ 手伝いコロッケ 作ったと 胸張りながら つまみ食いする」

  「秋終り 冬連れ北の 風が吹く 柿の木衣 脱ぎ捨て寒そう」

  「木守柿 モズがちゃっかり お裾分け 残りの一つ 私がいただく」

  「冬間近か 少し憂鬱 寒いのは やはり苦手だ 親父と私」

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