〇野の花を活ける
年末から年始にかけて寿を意味するような、少し豪華な花がわが家の玄関先に飾られていましたが、金曜日の夜それらを片付け、少し趣きの違った花が活けられました。妻は2週間に一度の金曜日、近所に住むお華の先生を自宅に招いてお華指導をしてもらっています。お陰で2週間ごとに玄関先の花がリニュアールするという一石二鳥の算段なのです。妻は近所の歯科医院にパートに出て働いていて、月曜日と金曜日は正午から午後4時30分まで休憩し、午後4時30分から午後7時過ぎまで勤務するため、仕事を終えて帰ってから夕食や孫たちと入浴を済ませたころを見計らって、お華の先生はやって来るため、金曜日の夜は何かと慌しいようです。それでも新たに活けられた花を見ると何となく心が和み、玄関先のイメージが変わったような気がしています。時々二階住まいをしている二人の孫がこの花を引っこ抜いたり、ひっくり返して妻に叱られていますが、これも愛嬌で笑いの種となっているようです。
わが家の玄関先と違って、いつも朝昼晩と食事をする南向きの私たちの食卓の上には、一輪挿しに質素でシンプルな花が飾られていますが、これは私が担当していて、主に家の庭や散歩途中の道端で見つけた野の花を飾っています。花は不思議なものでたった一輪の野の花なのに、食卓の雰囲気をまるで変えてくれるのです。今の時期は冬ゆえ野の花は少ないと思いきや、水仙、椿、野木いちご、山茶花などその気になれば結構あるし、冬ゆえそれらの花は1週間以上も長持ちするものですから、私の手間もそんなにかからず楽しんでいます。
4日前散歩途中の山の斜面で椿の蕾を見つけました。蕾は少し赤味を帯びた花弁が見えほころび始めていましたが、妻が一輪挿しに挿して飾るとストーブをつけた食卓の気温に反応し、二輪が一気に花開きました。椿は照葉樹の分厚くて緑濃い葉っぱが特徴なので、咲いた真っ赤な花とよくマッチして彩を添えているようです。まだ蕾が残っているので咲き終わった花柄を除けば、これから10日ほどは持つだろうと毎日見とれています。
ちょっとした気配りで日々の暮らしは何となく楽しくなります。私は花を活けたりするような風流な人間ではありませんし、これまでは風流を楽しむ余裕もありませんでしたが、せめてこれくらいのたしなみをしないと生きている価値はないようです。気がつけば私の書斎の机の上には息子嫁が綺麗な造花を飾ってくれています。造花は本物?と見まがうほど美しく、水をやらなくても枯れることなく美しさを保っていますが、やはり造花は造花です。飾ってくれた息子嫁には悪いのですが、訳を言ってそろそろ野の花に変えようと思っています。
先日裏庭の梅の木の剪定をしました。今年はまだ梅の蕾も固いようですが、剪定した枝には花の蕾がついているので、今朝にでも一枝一輪挿しに挿そうと思っています。季節を愛でる。うん、いい心がけだと自分の心の変容に納得した朝でした。
「玄関に 妻の手により 活けられた 花美しく 咲いて華やぐ」
「食卓に 椿一輪 挿しにけり 妻と二人で 綺麗と愛でる」
「外小雪 部屋に一輪 花が咲く 私の心 和みて今朝は」
「風流を 楽しむ余裕 少しだけ 歳を重ねた 故の成す技」