○メンタルヘルス②
つい最近メンタルヘルスという言葉をよく聞くようになりました。日本語に直訳すると「心の健康」というのでしょうが、モノが氾濫しほぼ成長の限界といわれる極限まできている昨今、年間自殺者数が3万人を越える異常事態となっていることからも分かるとおり、こころという目には見えない内面の問題と、私たち日本人はどう向き合えばいいのか、厄介な問題だけにその解決にはかなり時間がかかりそうです。
私はメンタルヘルスに関しては素人なので余り詳しいことは分かりませんが、その領域や予防、治療、疾患者への福祉、人間関係、人生の幸福論など、生活の様々な分野に及ぶ裾野は想像をはるかに超える広さのようで、私のような揃うとの手に負えるものではありません。しかしメンタルヘルスは専門家にだけまかせても上手く行くものではなく、身近な場所にいる私たち市民も時にはよき理解者となって協力しなければ上手く行かないことも事実なのです。
昨日一組の夫婦が人間牧場へやって来ました。聞けば子どもの頃からそれなりに学業も優秀で、素直な息子さんだったようですが、大学を卒業して就職活動するものの目指した会社に入れず、就職浪人しながら公務員志望の専門学校に入り頑張りましたが、ここ数年の不況のあおりでことごとく失敗し、結局は少し引きこもりになり親子両方の焦りが火に油を注ぐ格好となっているのだそうです。
人間牧場へは両親だけが来ましたが、息子さんに何とか立ち直って欲しいと願う親の気持ちは痛いほど分かりました。多分息子さんも親の期待が大きいだけに自分お力だけでは乗り越えられない大きな壁の前で立ちすくんでいることでしょう。
両親は公務員なので、息子は将来的に安定していると思われる公務員を、むしろ子どもの意見も聞かぬままレールを敷いてしまったようでした。「親が言うからその道に進もうとしたのに失敗した。俺が失敗したのは親の責任」という息子と、「子どもには出来るだけ安定した公務員を」と願う親の言い分は、まるで2本のレールのように何処まで行っても交じり合うことなく平行線を辿ったままの状態が続いているのです。
「公務員が本当に安定して社会から認められた仕事なのか」、残念ながらその答えは公務員をやった私が言うのですからかなりの部分で当たっていると思うのですが、あえて「ノー」と言わざるを得ません。それは公務員をした両親が一番よくご存知のはずなのです。「世間体」や「安定」はあるのかも知れませんが、公務員は人が考えるほどいい職業ではありません。むしろ他の民間産業に比べれば封建的で、年功序列的な弊害も多くあるのです。
むしろ通る当てのない公務員に執着するより門戸を広げて本当になりたい、やりたい仕事は何かを親子が真剣に話し合うべきだと思うのです。
私の息子も二人就職をしたものの自分の性格に会わず、次男は学び直しをして看護師に、三男は受験をしてなりたかった警察官になりました。まあ人生色々ありますが、親子ですからお互い胸襟を開いて子どもの希望を
第一に考えるのも解決の糸口かも知れません。一人の子どもが就職で悩むだけで家庭の今までの幸せが崩れたように感じているこの夫婦の話を聞いて、人事とは思えない感じがしました。
「就活に 失敗息子 家暗く 救いを求め 相談に来る」
「親と子が 何処かでボタン かけ違う そんな気がする 傍から見れば」
「公務員 ほんとにいいか 疑問です なった人しか 分からぬ苦労」
「今だから 親子互いに 向き合って 話せる昔 色々あった」