○敗れた麦わら帽子と新品の麦わら帽子
この4年間、人間牧場での作業の度に私の手足ならぬ、頭と足を守ってきたのは麦わら帽子と地下足袋でした。人間牧場を作るという話をしたとき妻が買ってくれたものです。あれから4年があっという間に過ぎ去りましたが、その作業の激しさを物語るように、地下足袋も所々に穴が開き、麦わら帽子に至っては頭のてっぺんが窓のように大きく開いて、熱射から頭を守れなくなってしまったのです。地下足袋も麦わら帽子も人間牧場の水平線に常備していて、滅多に家へは持って帰りませんが、先日作業をしたそのままで帰宅したところ、「何、その格好は」と妻に笑われてしまいました。そして先日の日曜日妻とお墓参りに行った帰り、ホームセンターに立ち寄って麦わら帽子を買ってもらいました。買ってもらったといっても、480円の安物だし、帽子の中には「中国製」と書いてあるので、大した買いもではありません。でも私にとって、特に今は夏場だけにこの麦わら帽子は大助かりなのです。
早速昨日から新品の麦わら帽子を被って作業を始めました。前の帽子が4年間も頭になじんでいたので、少々違和感はありますがそのうち慣れることでしょう。はてさて新しい麦わら帽子に私の心が移ってしまって、古い麦わら帽子はお払い箱なのですが、捨てるのも焼却処分にするのも勿体ないと思って今も水平線の家の棚の片隅に置かれています。頭の部分がぱっくり口を開け、まるで笑っているような顔に見え、「笑うセールスマン」を自任する私としては、落伍のネタに使えるかも知れないとふと思いました。
頭の部分が敗れた理由は、梅林での草刈りや収穫作業で木の下を、腰をかがめてあちらこちらと動き回るために木と接触したのです。いわばこの麦わら帽子は日除け以外にも頭を怪我から守ってくれたのです。確かに中腰での作業時には木に頭をぶつけて帽子を何回となく跳ね飛ばしました。その都度帽子を拾い被り直して作業し事なきを得たのです。
買ってもらった当時は破れた初代の麦わら帽子も新しい麦わら帽子と同じように表面は真っ白でした。その麦わら帽子もいつの間にかご覧のような色に変身しています。多分太陽の直射日光をいっぱい浴びての変色でしょうが、私の顔も帽子のおかげで紫外線から守ってくれたのです。先日はこの帽子に黒い網を被ってハチミツ採集を行いました。雨だったので頭の先から雨水が顔に流れてきましたが、ミツバチはこの穴を巣箱と感違いしたのか2~3匹飛び込んできて大慌てをしました。まあこれも今となっては良き思い出の一つとなりました。
さて新しい帽子は推測すると余程のことがない限り、大事に使えば4年は持つものと思われます。これからも麦わら帽子の世話になって、作業をしたいと思っています。
「開いた穴 ミツバチ住処 間違って 二三匹入り 危ないところ」
「何処となく 間抜けな俺の 顔に似て 開いた穴が 笑いかけてる」
「四年間 私の体 守り抜き やっとのことで お払い箱に」
「新品の 帽子被って さっそうと 何だ草刈り 恰好つけて」