○人間牧場での芋植え
学社融合という言葉があります。学校教育と社会教育が手を組んで子どもたちを健全に育てようという運動ですが、このところの相次ぐ青少年を巡る事件や事故をきっかけに、青少年の健全育成はすっかり陰を潜め防犯的な守りの性格が強い方向に誘導されているようです。しかしその防犯も危機感のあったあの頃はみんながその方向や子どもを見ていましたし、子ども見守り隊なども機能していたのに、いつの間にかすっかり馴れ合いになって、公も私も責任逃れや付け焼刃的日本らしい場渡り意識が垣間見えるのです。
「ふるさと教育」を提唱実践する私としては、これまで「無人島に挑む少年のつどい」など20数年にわたってボランティア活動を中心とした青少年の健全育成に取り組んできましたが、公教育に身を置く身として教育委員会教育長を辞めてからが本当の学社融合だと思い、人間牧場を開放し様々な活動に昨年から取り組み始めました。昨年は双海少年少女おもしろ教室のプログラムの一部である芋植えを人間牧場の農場で行いました。残念ながらイノシシに全ての芋を食い荒らされ、惨めな結果に終わってしまったのです。失敗経験こそ必要の立場から今年は「イノシシと人間の知恵比べ」をスローガンに芋植えを今年も5月26日(土)行いました。今年のプログラムは応募者が多く抽選までするという人気ぶりでしたが、選ばれた36人の子どもたちは元気に人間牧場へやって来ました。
(ウッドデッキで初夏を楽しむ)
今年の特徴は主催する実行委員会のかかわりを多くすること、子どもをお客さんにしないことですが、事務局の職員がこうした視点に目覚めて学社融合を考えることは昨年に比べると凄い成長です。多分企画から運営まで理想的に全てを実行委員会が関わることは出来ませんが、実行委員会のメンバーである小学校の校長先生がお二人も開講式に見えられるなど、既に効果が出始めています。また子どもたちもこれまでのように全てお膳立てした所でやるのではなく、畝つくりやマルチかけ、イノシシの害から守る網囲いや空き缶によるイノシシ脅しまでみんなで製作設置しました。
(囲い網の支柱に使う鉄筋の赤ペンキ塗り)
(空き缶を使ったイノシシ脅し作り)
やがて全ての準備が整いいよいよ植え付けです。マルチに穴を開け土を掘って芋ツルを差し込んでゆくのです。普通はここからが始まりですが準備万端整った後の作業だけにみんな真剣に取り組んでくれました。
(芋ツルをマルチの中に差し込んで植える風景です)
(大勢でやるのであっという間に植え付け完了です。
普通の作業はここまでですが、イノシシから芋畑を守るため周囲に網を張り巡らす作業が始まりました。漁師さんから貰った太くて頑丈な網を芋畑の周囲に打ち込んだ鉄筋や木柱、杉の木に張り巡らし紐で止めて行きます。
(支柱を打ち込む指導者たち、この日はえひめ地域政策研究センターの職員4名、大学生3名が応援に駆けつけてくれました)
頑丈な網を周囲に張り巡らせてゆきます)
(最後にイノシシに読めるように看板を立てました。「イノシシに告ぐ。このサツマイモは人間様の食べ物にて、食べるべからず。もし手足と口を出せば捕獲の上イノシシ鍋の刑に処す」と書きたいところですが、残念ながらイノシシは文字が読めないためこのような看板に落ち着きました。
みんなでイノシシ脅しの空き缶を回りに吊るしてやっと完成しました。想像以上の出来栄えに参加者も指導者も満足しその前で記念写真を撮りました。
あっという間に4時間が過ぎ弁当を食べ、人間牧場のあちこちを散策したり遊びながらのプログラムでしたが、前日の雨が嘘のように晴れわたり、この時期としては慰霊と思える黄砂が降り注いで遠望視界が効きにくい状態でしたが、事故もなくみんな元気に手を振りながら歩いて下山しました。
秋の芋畑会議が待ちどおしいですね。
「昨年は イノシシの餌 作ったと 悪評たたかれ 今年は奮起」
「活き活きと 芋植え励む 地元の子 眼下に瀬戸の 島々霞む」
「このツルに 芋が本当に 出来るのと 不思議を問うて 穴に差し込む」
「笑ってる どこか視線を 感じつつ 人間様は 馬鹿げた行為」