○夫婦円満
人のこととばかり思っていた自分のリタイアを経験し、リタイアしてから早くも2年近くになろうとしています。退職後の自由な時間に憧れながら一方では収入を断たれる不安や夫婦の絆の脆さを漏れ聞いていましたが、私たち夫婦に限っては今のところ講演依頼、大学非常勤講師、自治会長、ボランティアグループ代表、まちづくり団体代表などの仕事や役職が重なって自由な時間こそないものの収入も何とか飢えて死ぬようなこともなく生きてきました。肝心の夫婦円満については妻の気配りでしょうか、私の収入源を少しでもカバーしようと近所の歯医者で働くことは今までどおり辞めもせず家庭と両立しながらサポートしてくれ、今まで以上に円満な暮らしをしています。
しかし、退職の時に自分で誓った出来るだけ家庭での仕事もカバーしようと思っていたことは、やはり今までの癖が抜けきれず、相変わらずの亭主関白ぶりで暮らしているのです。
昨日の新聞の家庭欄「こころの森」に作家の難波利三さんが「夫婦円満」について書いていました。その記事に夫婦円満の秘訣は喧嘩をしないことだと書いていました。喧嘩をしないためには三つのことに注意すればいいのだそうですが、この三つが実は私の心を言い表しているような言葉なのです。
①時間を催促しない。
②買い物に口出ししない。
③不用意に言葉を発しない。
私は待つのが嫌いです。ですから何処かへ出かけるときも、自分の身支度が整えば何もせず車庫へ行き、車に乗って待っているのです。慌しく振舞う妻を見て「早くしろ」とせかし、時には遅い妻にクラクションまで鳴らすのです。化粧が長い、支度が遅い、忘れ物はないか、早くしろと口うるさくせかすものですから、妻も私に合わせようと必死になって、「あれっ、ガス消したから?」なんてことになり、楽しいはずの外出がもう出発の時点で不愉快な気分になるのです。難波さんは「どれだけいらついても忍の一字で絶えろ」というのですが、はてさてそんな忍耐が出来るかどうか。
最近私はハーモニカを吹いています。車の中で妻を待つことが多い私は、密室たる車の中でハーモニカを練習するのです。嬉しいことにその技術は向上しないもののどうに人前で吹けるところまで漕ぎ付けたのは待ち時間のお陰です。
買い物には基本的について行くのは荷物を持たされ時間を待たされるので嫌いです。ですから買い物には妻も割り切って娘たちと行くようにしていますが、旅行などに行った時は仕方なく同行します。ところがどうでしょう。行った先々でお土産をやたらと買うのです。一年前退職記念でカナダの旅に出かけました。「おいお前、帰ったら土産物屋をするのか?」と悪態を叩くほどに買うのです。「いつも貰うばかりで悪いから」とか、「みんな私たちが外国旅行に行ったことを知っているから」とかいちいち口上を言いながら買うのです。ひどいのはまだカナダに行っていないのに旅行業者から送られてきたカタログでお土産を品定めして、帰る日に到着するよう手配するのですから呆れてものが言えません。これも見てみぬふりをして見ていろというのでしょうか。
不用意な言葉もよく出ます。先日旅行に一緒に行きましたが、風呂の好きな妻は折角温泉に来たのだからと4回も入って磨きを掛けます。「温泉なんて2回も入れば十分」は禁句、バイキング朝食も食べきれないほど取ってきます。そんなに食べて大丈夫か。太るぞ」も禁句。ああーあ、何のための旅行だか。結局最後は「お父さんとはもう旅行はしない」と妻を怒らせてしまい、後味の悪い旅行になってしまうのです。
定年を迎えたのを機に夫婦円満を第一に考えて行動しているつもりでも、中々上手く行きません。要はお互いがわがままにならず譲り合う気持ちが大切です。こんな話を妻にしたら「お父さん今頃気付いたの」「でもその気持ちは自分自身にしっかり納得させてね」であえなくチョンでした。情けなや、情けなや。
「わがセリフ 早くしないと 早くしろ 何処の早よだか 分らず早よと」
「ほっとけば 財布空まで 続けたる そんな予感の 妻の買い物」
「言いたくは ないと言いつつ 言う私 結局喧嘩 妻に軍配」
「これからは 夫婦円満 心がけ そんな殊勝な 気持ち芽生えて」