○青春18キップの無くなった一枚のキャンペーンポスター
役場のかつての町長応接室に幾つかの観光ポスターがアルミの額に入れて飾られています。実はこの観光ポスターは私が個人的に集めていたものなのですが、前町長が来客用にと依頼を受けて展示していました。しかし主のいなくなった町長室や応接室はすっかり荒れ果て今は見る影もありません。特に町長室は倉庫のようになっていて、かつてはここで重要なことが話され、時には政策決定がなされたことを思うと何かしら侘しささえ感じます。先日この応接間に所用でお邪魔しましたが、私のポスターの一枚は何処かに行ったのでしょうかなくなっていました。私は他の二枚もやがてこうした運命になるのではないかと思い、担当者に訳を話して思い切って家へ持って帰りました。この3枚はセットで下灘駅が登場している青春18キップのキャンペーンポスターなのです。
私はこのキャンペーンポスターにはことの他思い出があります。夕日に出会ったのも、夕焼けコンサートを開いたのも、寅さんとであったのもこの下灘駅でした。私にとって下灘駅は私の人生ドラマの始発駅であり終着駅でもあるのです。
家へ持ち帰ったポスターの一枚は女性が下灘駅プラットホームのベンチに座って列車を待ってる風景、もう一枚は下灘駅の改札口を中から写しています。無くなったもう一枚は下灘駅のプラットホームの屋根付き待合所とでも言うのでしょうか、海を見下ろす長閑な雰囲気が醸すポスターでした。今頃どこにどうしているのか定かではありませんが、是非探し当てて双海町の生き証人として私が大切に保管したいと思っています。でないと私の人生そのものが否定されたような気がして寂しいのです。
先日双海町の商工会長の三井さん宅を訪ねたら、私の探しているポスターと同じものが酒店のバックに張られていました。心ある人はこうして手に入れ大切に保管しているのです。
合併をして早くも1年が経とうとしています。街の中に人の姿が少なくなり、だんだん寂れていくような寂しさを感じます。と同時に私たちが熱く燃えた双海町のまちづくりも、そこから生まれた様々なドラマも次第に忘れ去られようとしています。これも時代の流れと諦めるべきなのでしょうか。
無くなった一枚のポスターよ、あなたは何処に。
「亡くなりし ポスター何処に あるのやら 探し残さにゃ 俺の気済まぬ」
「人想い 消えた部屋の 隅々に 在りし思い出 甦り来し」
「懐かしむ そんな俺たち もう古い たった一年で そんな錯覚」
「渡辺も 塩崎もみな 合併で 散り行く定め 俺と同じに」