○四国は島です
この二日日本の中国地方を旅しました。中国という場合チャイナの中国があるから気をつけて話すようにしています。というのも数年前「明日は中国へ行ってきます」と電話で話したら、友人が「それはそれは遠い所へご苦労様です」と言うのです。そして最後に「中国へ行ったら紹興酒を買ってきて下さい」と付け加えました。私は「同じ中国でも島根県です」と訂正して大笑いをしましたが、電話は左様な間違いが時々起こるのです。今回の旅も中国地方の広島と山口なのですが、四国に架かっている3本の橋はいずれも東よりなので二日とも船を利用し、四国が島であることを実感しました。広島の江田島市へは松山から呉までフェリーで行き、呉から小用まで高速船で渡り、港で出迎えの公用車に乗りましたが、島の暮らしぶりは長閑で、乗り合わせた乗客の会話はローカルそのものでした。まったく見ず知らずの私にさえも平気で「お兄さん何処まで行くの、何処から来たの」と矢継ぎ早な質問会話が飛び交うのです。先日訪れた大阪の都会ではとても考えられない光景でした。
壺井栄の「二十四の瞳」に出てくる「島かと思えば岬なり、岬かと思えば島なり」を彷彿するように、船は島々の間を縫うように走るのです。海にも高速化の波が押し寄せ、高速船は松山と広島を僅か1時間余りで結んでいるのですが、私はあえて安いフェリー便を選びました。少し時間はかかりますが料金は半額で断然お得だからです。
「広島と山口に行くんだったら隣の県だから一泊すればいいのに」と、お互いの目的地の位置関係を知らない妻は勧めてくれましたが、二日目は松山三津浜から柳井航路に乗りました。愛媛県と山口県の県境を越え、周防大島を左手に見て走ること2時間25分で港に到着、白壁の町柳井の港へは立派な公用車が迎えに来ていました。仕事を終え再びフェリーに乗った頃にはすっかり暗くなり、冬の海を帰ってきたのです。
瀬戸内海には大小3000余りの島があって、その島も過疎や高齢化のあおりで無人島化しつつあるといわれています。でも船に乗ってこの美しい瀬戸内海を航海できる幸せを、島国四国に住める喜びとしていつも感じています。
中島本島には古野さんがいる。あの二神島には豊田さんがいる。周防大島には山根さんがいる。そう思いながら遠望かすむ島々を巡ると、船旅は実に楽しいものです。特に無人島キャンプで度々訪ねた由利島横を走る頃には寒い甲板に出て感慨深く見つめていました。
そう、昨晩電話のかかってきた宇和島の宮川君は宇和海日振島の出身だし、毎年美味しいハマチを届けてくれる宮本正勝さん千里さんご夫妻は戸島なんだ。そう、かくいう私は四国という島に住んでいるんだと実感しました。
「あの人も俺もみんな島育ち日本という国全てが島です」
「島岬区別もつかぬ船の旅ふるさとなまり声を掛けられ」
「長時間乗ってもフェリー何故安い油代とて高いというのに」
「この海は船の銀座いう程に大小船が盛ん行き交う」