○日本三大名園後楽園を訪ねる①
私の講演旅行の機会も加齢とともに、体力的な限界が近付きつつあります。退職してからこの5年間、ほぼコンスタントに毎年120回くらいな講演をこなしていましたが、さすがに少し疲れるようです。そのため今年からは毎月約1週間は連続して休むよう心がけています。それは気力と体力、それに知力がうまくマッチしないと、講演先の相手に失礼なからなのです。そんな思いもあって出かける時はこれまで以上に少しのんびりしようと心がけています。
今回の岡山での講演も、本来なら総社市で朝10時からですから早朝5時に家を車で出れば、瀬戸大橋を渡って何とか日帰り出来ると思ったのですが、相手から前日の宿泊を、そして妻から公共交通機関を利用を勧められたのをいいことに、一泊二日の旅と相成りました。
岡山といえば何度も足を運んでいる場所だし、街中も相当歩いているのですが、それでも冬の芝生の枯れた後楽園を見たいと思い、一便早い特急しおかぜに乗ったのです。岡山駅に着くと直ぐに相手先の先生が手配をしてくれた宿舎である東横インに向かい、まず荷物を預けてカメラ片手の身軽な格好で歩き始めました。ホテルは西口、後楽園は東口の反対側なので、かなり歩かなければなりませんでしたが、それも承知の上で体力づくりだと思い歩きました。
川に架かった長くて太い橋の向こうにこんもりとした後楽園公園が見えてきました。箒を逆さにしたような大きな欅の木はすっかり葉を落とし、冬の風情で私を迎えてくれました。チケットを買い求め講演の中に入りましたが、シーズンオフの夕暮れ時とあって人影もまばらで、イメージした通り芝生は冬枯れして真っ青な空の青とマッチして美しい光景を見せていました。
水辺に写る空の色も格別美しく、水面に写る空の色も周辺の松の緑もまさに絵になる光景で癒される思いがしました。公園は平地にあるものの築山の妙とでもいうのでしょうか、公園のほぼ中央にこんもりとした小山があって、公園内の日とん度を見あ渡せるようになっているのです。築山には茅葺の東屋があって心憎いばかりの見事な設えです。この日は乾燥注意報が出るほど空気が澄んでいて、歩く足元は歩く度に土煙るがたち靴もズボンも土埃だらけになってしまいましたが、そんなことも気にせず園内を楽しく散歩して歩きました。
以前妻と来た時は確か燃えるような若草でした。春の梅や桜、夏の菖蒲、秋の紅葉などを連想しながら歩くのもまた一興です。公園の池に浮島のような小さな島があって太鼓橋が架かっていました。またその袂には池に張り出した船隠しの小さな小屋があって、目と足を奪われました。近くの茶屋の赤毛氈を敷いたひろしきに腰をかけ、お茶子さんの差し出す抹茶を飲みながら止まったような時空を楽しみました。
「せっかくの 機会だからと 欲張って 一便早く 列車に乗りぬ」
「荷を預け カメラ片手に 冬道を 長閑に歩く これぞ幸せ」
「冬枯れの 公園風情 これもよし 足にまとわる 土煙り無視」
「大名が 贅の限りを 尽くしたる 庭園我も 銭を払って」