○「天気が悪い」という言葉
私たちは毎日毎日天気とともに暮らしています。爽やかな秋の頃となると空の色も澄み渡り、まさに日本晴れといったところでしょう。今日のような日は「今日は天気がよい」といい、雨が降ると「天気が悪い」という表現をします。正式には「晴れた」「雨が降る」でよいのでしょうが、何故か天気が良い悪いと天気を相手に、日々の暮らしを天気のせいにしているようで、天気に悪いなあと思っています。
このところ遅い台風の影響で関東地方はぐずついた天気が続いたようですが、こちら四国の瀬戸内側では晴れた日が続き日本一といわれる双海の夕日もすごい迫力で水平線に沈んでゆきます。
「夕日を見に行きたいのですが何時の夕日が綺麗ですか」とよく質問されます。夕日博士を自認する私としては、この時とばかりに夕日の薀蓄を語るのですが、この質問には「あなたの来る時の夕日が一番美しい」と答えています。
そうなんです。夕日はその日その日によって、また見る人の心のありようによって違うのですから、そうとしか言いようがありません。秋の頃の澄みきった大気は夕日を大きく見せてくれますし、冬の荒れた海に沈む夕日も格別な味わいです。また春の黄砂振る頃の真赤に焼けた空に燃える夕日も綺麗です。さらに夏の夕日は炎暑の終わりを示す涼感を持っています。季節によって違う夕日の見方や面白さの他に、自分の心の鏡のありようによって違う味わい方があることも知っておくべきだと思います。
最近は気象衛星のお陰で天気予報の当る確率が高くなってきました。毎朝4人の子どもが「お母さん今日はどんな天気」と聞くと、「お父さんに聞いてみなさい」といって私に振ってきました。その都度私は「晴れ時々雨だから自分で判断しなさい」と冗談交じり言葉を交わしました。親子の何気ない会話ですが子どもは何時も天気の判断を親に委ねる習慣がありますから、天気ぐらい自分で判断するように言ってきました。
雨の日「今日は天気が悪い」と言おうものなら「天気は悪くない」と返します。だって「雨降ってるじゃないの」、「それは雨が降ってるので天気は悪くない。天気のせいにするな」、「お父さんと話していると、朝からこんがらがってしまう。お母さん今日天気悪いよね」、「雨が降っているんだから天気が悪いに決まってる」と、まあこんな調子です。でも「天気は悪くない」と思うのです。
現代人は自分の不幸を人のせいや社会のせいにしてしまう悪しき習慣があります。「幸せは皆身にあり」と肝に銘じれば世の中うまくいくのですがどうでしょう。