○苦渋の選択
「苦渋の選択」という言葉を聞く度に一字違う「苦汁菜」を思い出します。正式な学名は知りませんが、私たちの地方では荒れ地に小指ほど、背丈ほどの小さな木が生えます。その木のことを苦汁菜の木と呼んでいますが、この葉っぱは読んで字の如く香りまで苦い苦い木なのです。そかしこれが料理の仕方によっては山菜として珍味なのですから分らないものです。近所の人に譲ってもらう梅の木の畑にはこの苦汁菜の木がやたらと生えています。草刈木で刈っていくのですが、面白いように倒れて行きます。私は草刈機を使いながら、この苦汁菜の木の新芽を摘もうと思ったのです。急いで水平線の家に戻ってナイロン袋を持って来て柔らかい新芽を袋いっぱい取りました。
夕方自宅へ持って帰ると、仕事が遅くまであった妻は、叔母の一周忌の念仏に出かけなければならないので、それどころではないという雰囲気でした。仕方がないので昔祖母の手伝いをした記憶を思い出して苦汁菜の佃煮を作る事にしました。
苦汁菜佃煮の作り方レシピ
①苦汁菜の木の新芽を摘む
②摘んだ芽を水洗いしながらゴミや硬そうな茎を取り除く
③ボールのようなものに新芽を入れて塩でまぶし丹念に揉み解す、揉み方が不足すると苦味が残る
④しんなりして苦い悪が出たらよく水洗いをしてきつく絞る
⑤絞った苦汁菜を鍋に入れ水はヒタヒタ程度で煮る
⑥青が茶色になったら冷水でさらし水気を取る
⑦鍋に入れてほぐし水を少なめにして砂糖や醤油を加えて煮る
⑧好みに合わせて大粒の梅干をほぐして入れる
⑨最初強火、最後は弱火で煮詰めてゆき、最後は水を飛ばして出来上がり
⑩仕上げにレモン汁をふりかけ飛ばすと一層味が引き立つ
まあこんなもので、あの苦かった苦汁菜が何と佃煮風になって、お茶漬けの友や酒の肴になって最高です。妻からは「やれば出来るじゃない」と皮肉たっぷりに言われましたが、本当に美味しくできたのですから不思議です。先日妻の友人から苦汁菜の佃煮を少々頂きましたが、あの味よりは勝ったかなって感じです。この苦汁菜の佃煮の欠点はガス代がいることと、手間暇がいることですが、せめて人間牧場の敷地内に生えているものが沢山あるのですから、これからもせっせと挑戦したいと思っています。今日は苦汁菜と一緒にフキも取って帰りましたので、これも佃煮にしなければなりません。
それにしてもふと気がついたのですが、私のような亭主関白の男が、随分変わったものです。これぞ人間牧場の目指している「自立」なのかもしれませんね。
「苦汁菜の 佃煮作る われを見て やれば出来るね 妻の一言」
「飲まずとも 食べる苦汁を 選択し せっせせっせと 佃煮つくりぬ」
「約2時間 摘みし責任 果したよ いいことなのに 次はよそうと」
「今日は肩 腰と腕痛 使い過ぎ なれぬ仕事え 体に偏重」