人間牧場

〇山のあなた
 秋の彼岸の頃になると、わが家の裏山に毎年のように赤い彼岸花が人知れず咲き始めます。色鮮やかなまるで花火のようなこの花を見る度に、自然の造形とはいいながらその見事さに思わず見入ってしまいます。

 彼岸花咲く子どもの頃に読んだ本の中に、たまたま「やまのあなた」という詩があったためでしょうか、ドイツの詩人カール・ブッセのこの詩を思い出すのです。読み方さえも知らず、ましてや意味さえも知らずに大人になりましたが、流ちょうゆえ、どういう訳かこの詩を暗記しているのですから驚きです。

 大人になり地域づくりにかかわるようになってから、この詩の意味を調べてみました。~山のずっと彼方に「幸せの理想郷」があるというので尋ねて行ったが、どうしても見つからず、涙ぐんで帰ってきた。あの山の彼方には「幸せの理想郷」があると世間の人々は語り伝えるのだ~。

 ふと司馬遼太郎の「坂の上の雲」にもこんな一説があるのを思い出しました。~のぼってゆく坂の上の青い天に一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみを見つめて坂を上っていくであろう~。幸せの理想郷を作るために努力したつもりですがこれが中々でした。

「裏庭に 今年も咲いた 彼岸花 花を見る度 不思議な造形」
「この花を 見る度何故か 一片の 詩を思い出す やまのあなたに」
「読み方も 詩の意味さえも 知らぬまま 暗記していた 記憶の彼方」

 

 

 

 

[ この記事をシェアする ]