○学校が間もなく廃校に
数日前大洲市立櫛生小学校の教頭先生から、「今年の三月末で学校が廃校になります。ついては最後のPTA講演会に来て講演してほしい」と電話がありました。この学校の森田校長先生は私の町の出身だし、教頭先生も前任校はわが町の下灘小学校だし、断わる理由もないので喜んでお引き受けすることにしました。
講演会は午後2時40分からなので、昼食を終えてしばらくしてから家を出て、久しぶりに海岸国道378号、通称夕やけこやけラインをのんびり走りました。昨日は伊予路に春を呼ぶといわれる椿さんの縁日最終日で本来なら寒風吹きすさぶころでしょうが、気温は寒かったものの春近しを予感させるような穏やかな日和で、伊予灘の海も凪いで、長浜を過ぎると遠くに伊方原子力発電所の姿が見え、今更ながら原発の身近に住んでいることを実感しました。
須沢を過ぎて櫛生の集落に入り、かつて講演で訪れたことのある公民館の前を通り過ぎ、川に沿って少し奥に入ると学校の建物が見えてきました。長浜の町に入った所で教頭先生から携帯電話が入り、「学校では縄跳び大会をしているので、校長室で待っていてください」と連絡があったので、校門近くに駐車して学校本館に入りました。
校長室は内鍵がかかって中へ入ることが出来ませんでしたが、間もなく校務員さんが帰って来て内鍵を開けて校長室の中へ案内してくれました。お茶をいただきながら、校務員さんとお話をしました。私の話を聞いたことがあるとのこと、その時も木になるカバンを持っていたとのことなどを話していると、教頭先生が帰られ、そのうち校長先生も帰られて懐かしい話をしながら、それとはなしに子どもの数が10人、保護者家庭は8人、学校はこの3月で閉校などの話を聞くことができました。教職員も5人と小さな学校でしたが、学校が消えてなくなるとは思えない実に明るい雰囲気で、多少安心して講演会場へ入りました。
会場には15人ばかりが集まり、和気あいあいでした。私に与えられた時間は約一時間でしたが、「子育ての失敗談」という面白い演題に沿うように面白い話をさせてもらいました。
来年度から子どもたちは長浜の統合小学校にスクールバスで通うそうですが、学校がなくなると地域が寂れるという心配の声が多く寄せられているそうです。でも殆んどの人はこれも時代の流れと受け止め、他地域のように統合や廃校に抵抗することもなく今日を迎えているようでした。
私たちの身の回りには少子化と高齢化、過疎化の影響で縮む社会の荒波が押し寄せてきています。それはこれまでの成長が止まり、下り坂を一気に転げ落ちるような大きな不安なのです。しかし縮む社会は田舎嘆きの十ヶ条のように工夫や努力をすれば解決できる問題ではないのですから、不安を通り越して諦めにも似た心境です。
人間も地域も希望を失うと閉塞感が漂い、容易なことで立ち直ることは出来ません。学校が閉校になろうとしているのに学校の跡地利用についても、何ら明確な方針も示さない行政のやり方は、やはり大きな疑問が残るのです。地域の自立や自発を声高に述べてみたところで、このままほおっておくと、地域は完全に希望を失い廃墟と化すのです。これが近代化したと世界に誇る日本の姿でしょうか。「小学校は歩いて行ける距離」として明治以来地域の拠点となった学校が今消えようとしています。校庭に学校の歴史を見続けてきた学校のシンボルと思える楠の木が、印象的に立っていました。「学校とは木が交わって学ぶ」、「家は木の癖組み」など、誰かに教えてもらった言葉を思い出しながら最後の学校を後にしました。
「来年は この学校も 消えるのか 落胆しつつ 楠の木見上げ」
「学校は なくなるけれど 人は住む へこたれないで エールを送る」
「学校は 木が交わって 学ぶそう コンクリートの 校舎空しく」
「終わりなら 始まりだとも 思えよと ポジティブ生きる 方法学べ」