人間牧場

〇白く可憐なニラの花

 15年前に亡くなった母ちゃんが、「道端の草花にも足を止め、綺麗だと思えるような人間になりなさい」と言っていました。今は人間牧場になっている土地は元々サツマイモや大麦を植える畑でしたが、その後みかんの苗を植えてみかん畑になっていました。当時は新道車道はあっても、車のなかったわが家では、サツマイモも麦もみかんも全て細長い山道を背負子に背負って家まで運んでいました。

ニラの花
ニラの花

 子どものころは、私たち子どもも重要な労働力として駆り出され、私専用の背負子で汗をかきつつ母親の後をついて働きました。道端に腰をかけて一休みする場所は決っていて、そこには季節の草花が沢山咲いていました。この頃になると初秋の風が漂い、真っ青な空色のような露草、ナデシコ、ススキ、萩などなどがいっぱい咲いていましたが、母ちゃんと「綺麗綺麗」といいながら眺めたのを思い出すのです。

 子どものころのような重労働の合間ではありませんが、毎朝夕ウォーキングする道端にも、その気になって見れば沢山の草花が咲いています。昨日ウォーキングの帰り道で、わが家の畑の隅の足元に、真っ白いニラの花を見つけました。餃子やニラ雑炊に欠かせないニラの葉っぱはスーパーなどで売っていますが、道端にも種を落とした野生のニラも結構生えていて、この時期花を咲かせるようです。薄紫のラッキョウの花とはまた少し違った趣ですが、野生ゆえに美しさを感じました。

 花の種は自分がはじけて居場所を作りますが、野鳥も啄ばんで糞に落としてもあちこちに広がります。今年は正露丸のような黒い実を結んだら種を取って、畑の隅に播いてみようとよこしまな考えになりました。何はともあれ母ちゃんが教えてくれた言葉通り、ニラの花の美しさを楽しもうと思い、しゃがんで花の美しさに見とれました。母ちゃんは天国のどのあたりで今年逝った父ちゃんと出会っているのでしょうか。

  「道端の 草花見ても 綺麗だと 母ちゃん教え 思い出しつつ」

  「ニラの花 畑の隅に 人知れず 露を含んで 綺麗に咲いて」

  「ニラの種 今年は取って 増やそうと よこしま考え 頭に過ぎる」

  「秋近し 道端そこそこ 野の花が いっぱい咲いて 散歩楽しい」 

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