○深夜の友人からの長電話
昨日の夜11時頃、寝転がってテレビを見ていると自宅に電話がかかってきました。「こんな時間に一体誰だろう?」と言いつつ、いつものように妻が電話口に出ました。「こんな時間に誰だろう?」と私も思いました。すると「お父さん○○さんから電話よ。お酒に酔っているみたい」」と言いながら私にコードレスの受話器を渡してくれました。さあそれからが大変です。まるでエンドレスのテープレコーダーを聞いているように、同じことを巻き返し繰り返し、延々30分近くも話すのです。「俺は酔っている。すまん」と前置きして話すのですが、「酔っているようなので用件は明日にでも」と電話を切ろうとすると、それを遮るようにまた元に戻って話しを始めるのです。こちらも少し頭に来て最後は電話を切りましたが、すっかり眠気も吹っ飛んでしまい、昨晩はそのことが気になり中々寝付けませんでした。
私の親父は12人兄弟の長男です。親父の兄弟は戦災で亡くなった2人の叔母に加え、病気で3人の叔父と1人の叔母が亡くなっていますが、93歳の親父を含めて6人が健在でその連れ添いも4人健在なのです。故にこのような深夜や早朝に電話が架かると失礼ながら、「もしや?」と思ったりするのです。
酒に酔って私に電話を架けてきたのは役場の元同僚でした。在職中は一緒に仕事をしたこともあり何かと気が合って、時々ならぬ頻繁に一緒に酒を飲んだ間柄でしたが、私と相前後して退職したため、年に数回車ですれ違う程度の出会いしかないのです。つまり私と彼は今や住む世界が違う人なのです。私が講演等で忙しくしている様子は風の噂で知ってはいても、パソコンもやらないため、私の毎日書いているブログ記事も読んだことがないらしく、「ブログって何?。そんなもの持っていない。」とあっさり会話が途切れてしまいました。
彼が言いたかったことは、9月の敬老の日に、「自分が区長をしている敬老会で落伍をしてくれないか」という相談でした。しかも「金がないのでタダで、お年寄りを存分に笑わせてくれ!」というのです。断ると酒の勢いで電話口ながら「俺の一生の頼みが聞けないのか」と毒つくので、ひとまず「分かった分かった。あんたの頼みを聞いて予定を入れましょう」と安請け合いをしてひとまず電話を切りました。電話を切って書斎へ入り予定表を見ると、既に予定が入っていましたが、何とか都合がつきそうな感じでした。
電話を架けてきた彼はまだ酒が残って夢の世界でしょうが、酒の勢いとはいえ引き受けてしまったからには、彼の顔も立てねばと、「酒によってこんな話をするとは何事か」と多少不機嫌ながら考えています。
退職後の暮らし方は百人百様です。役場を辞めた人の殆んどは退職後2~3年、区長等地元のお世話役を押し付けられ、進んでというよりは嫌々ながらやっています。時にはまるでクレーマーではないかと思われるような言動の人もいますが、概して一般市民から見れば非協力的で、学習活動やボランティア活動に参加して、活き活きと輝いて生きている人は少ないようなのです。
長電話を切る時、彼が最後に言った「あんたが羨ましい」という言葉は、少し嬉しい誉め言葉でした。確かに私は退職して自由人になりながら、請われるままに講演活動やボランティア活動をして、心身ともにすこぶる健康でやっているのです。地元の区長も2年ほどではありましたが務めたし、それなりに情報も発信しているのです。60歳の定年を終えてからの第二の人生は、しっかりとした自分の生活設計さえ持てば、とても楽しく生きられるのです。好きだった酒も病気になって止めましたが、酒に変わる何かを掴み、人生の楽園で楽しく生きている自分を、幸せ者だと思いました。
「酒に酔い 深夜架かった 長電話 酒の勢い 切りたい切れず」
「電話にて お前の生き方 羨ましい 言われて見れば 頷き嬉し」
「定年後 どんな生き方 するのかは 人それぞれと 思いながらも」
「酒止めて 良かったですね 妻が言う 昔は俺も あんなだったと」