○東京からのお客様
ご主人の単身赴任という生活をしたことのない私には、そのプレッシャーが留守を預かる家族にもたらす重さは計りようもありません。ましてやご主人が赴任先でどんな仕事や暮らしをしているのかは、心配するもののこれまた全てを知る由もないのです。
一昨年の夏一人の男性が東京から松山へ単身赴任して来ました。そのポストはキャリア組なので非常に高くて重いものなので、リタイアして何の重さもない無位無官な私とは出会うはずもないのに、ふとしたことから知り合いとなり、この1年半余りつかず離れずの付き合いをしてきました。人は100回会っても1回しか合ったことのないような薄い付き合いもありますが、この男性は1回会っても100回会ったような人間性豊な人なのです。ゆえに土日等たまの休暇を利用して愛媛県内を案内したり、時にはお互いの研修会に知恵を出し合って濃密な活動を展開してきたのです。
その男性から、子どもが春休みになったので東京から家族がやってくるので、ご一緒したいというごく内輪な話が届きました。双海町へ来たいというので早速どこへ連れいていこうかスケジュールを立てました。ご希望は翠小学校や、菜の花畑、人間牧場だったので、午後2時過ぎに伊予市駅まで自家用車で迎えに行きました。東京暮らしの今度小学校3年生になる男の子と、今度在京の大学に進学する女の子、それに奥さんの3人が男性と共に駅に降り立ち、早速双海町へ向かいました。この日は冬が来たような季節はずれの寒い北風が吹いて、南国四国の暖かさを楽しみにしていた家族は、首をすぼめ寒そうにしていました。
翠小学校はお休みだったので運動場へ入り外から眺める程度で記念写真を撮りました。その後大森さんのハウスイチゴ園に無理を言って入れてもらい、品薄ながらイチゴを頬張りました。この時期のイチゴは甘いはずながら団体客が食べた後なので残念な気もしましたが、まあ都会の人には思い出の片隅に残ればいいくらいな感じで案内しました。
続いて閏住の満開の黄色い菜の花畑やマッチ箱のような一両の列車が入ってきた下灘駅を案内しましたが、いずれも春の四国路旅情をかき立てる風情があっていい雰囲気でした。その後曲がりくねった道を人間牧場まで行きました。急峻な地形、曲がりくねった細い道、ウッドデッキから見下ろす瀬戸内の遠望や絶景、ロケ風呂の不思議に子どもたちは事の外興味を示してはしゃいでくれました。
夕日を見る時間になっても西の空は時折しぐれるような雲行きだったので、高速道路に乗って少し高台から後に夕日を感じながら、松山へ向かいました。松山では妻と合流し、ご主人が予約していたこじんまりした鮨屋さんで、耳鼻咽喉科の院長ご夫妻とも合流して賑やかな夕食会となりました。聞けば院長先生の奥さんは旧上灘中学校で20年も前に、長男や長女を教えたことのある先生だったそうで、子どもたちの話に花を咲かせました。
時の経つのも忘れて美味しいお寿司に舌鼓を打ちながら、久しぶりに出会った家族のふれあい振りを見学することが出来ました。家族とはいいものだとも思いました。多分この男性は今年の夏の異動で2年間の任務を終え家族の住んでいる東京へ帰るものと思われますが、やはり家族は同じ屋根の下に住んだ方がいいに違いありません。でも離れているから逆に親子の絆を感じることもあるし、多分この家族はそれをしみじみ感じていることでしょう。
お別れをして帰宅する車の中で妻と色々な話をしました。離れることなく一緒に暮らしている夫婦の絆や、息子家族との賑やかな同居の意味も感じることができました。聞けば昨日は息子さんの誕生日だったそうで、また娘さんとわが長女の誕生日が2月26日という同じ日であることも分かり、まあ面白いご縁がありました。奥さんも控え目な素敵な方で、時々息子さんと二人の連名連文でハガキをいただいていて、家族の姿を垣間見ることが出来ました。
「単身で 赴任生活 してる人 家族呼び寄せ 春を楽しむ」
「遠くても 絆の深い 家族にて ほのぼの姿 あやかりたいな」
「わが家族 幸せですと 胸を張る 姿は違え 賑やかですよ」
「いきなりに あなたの子ども 教えたと 言われ世の中 狭いもんだね」