○ハッピーな人生でありたい
近所の歯科医院にパートで勤めている妻には只今のところ、土曜日は終日仕事のため日曜・祭日しか休みがありません。したがって泊り込みで出かけたりすることが出来ないため、只今のところ行く場所が限定されるのです。この歳になっても妻に働かせるのは夫たる私に甲斐性がないからだと自責の念に駆られていますが、当の本人は働くことは嫌がらず、むしろ少しだけ緊張感があると喜んで毎日働きに出かけているようです。
妻の楽しみは何年か前アナログ放送から地デジにテレビ放映が変わったころ、買い求めた35インチのビデオ再生機能内蔵のテレビで、毎朝起きると番組予約表をチェックして、見たい旅番組やサスペンスドラマなどを録画して、帰宅夕食後の夜寝る前にビデオを見ることのようです。私は会議などでリタイア後も結構夜家を開けることが多いので、まあそれもいい趣味だと横目で見ていますが、いつの間にかテレビのチャンネル権は妻の手に移ってしまっていて、私など入り込む隙間もないのです。
仕方がないので私は書斎でパソコンや読書を楽しんでいますが、余り夫婦のすれ違いは好ましくないと妻の横に座って妻の選んだ番組を見せてもらっているのです。昨日は泉ピン子さんと大杉漣さんが主演のドラマを妻と二人で見ました。伊豆半島稲取という漁村が舞台のドラマは診療所に赴任してきた女医と頑固一徹な漁師、そして震災の津波で家族を失った診療所の看護師、漁師の息子などが心の葛藤を繰り広げるのです。2時間番組の途中にはこれでもかというほどコマーシャルが入っているので、その都度コマーシャル部分だけ妻が早送りしてくれ、トイレに行くのも我慢して見続けました。漁師の奥さんは病院をたらい回しにされて亡くなりましたが、生前夫にしてもらいたかった10のことをメモに書いて亡くなりました。「食事を食べたら美味しかったと言って欲しい」とか、「屋根の雨漏りを直して欲しい」「家族3人で花見に出かけたい」など何げなく他愛のないささやかな10のメモは、夫婦の対話の素材になり大いに盛り上がりました。
はてさて酒好きな漁師が妻に果たせなかった10の望みから比べると、私は妻に及第点を貰うほどいい夫として妻に貢献していると思っていたのに、妻に言わせると私もこの漁師と50歩100歩だと手厳しく言われました。
「このテレビドラマだけはあなたに見せたかった」と、いいながら見たドラマのストーリーはハッピーエンドでした。わが家もこれから先はどうなるか分からないまでも、蓄えや財産・名誉がある訳でもなく大きな喜びこそありませんが、ささやかなハッピーで推移をしているようです。
人は悲しいかな何かをなくさないとその存在に気づかないものです。病気になって健康の有難さに気づいたり、家族を失うことで家族の絆の大切さに気づくのです。「人は何のために生きるのか」、このドラマはそのことを問いかけているようでした。家族のため、地域のため、明日のために生きることが正解のようでした。
「いつの間に テレビチャンネル 決定権 妻に渡って 私おろおろ」
「何のため 生きているかと 問われたら 家族や地域 明日のためと」
「深夜まで 二人でテレビ 視聴する あれやこれやと 比較しながら」
「このドラマ あなたにだけは 見せたいと 妻のたっての 願い叶いて」