○大恩人・人間牧場へ来る・②
ひと通り案内見学が終わって、関会長さんは私が日頃愛用している背もたれ椅子にどっかと腰を下ろして休息です。本当は高座に上がって夕日亭大根心の落伍を聞いて欲しかったのですが、時間も限られているし、何よりも夕方になると藪蚊が沢山出てきたため、田宮さんが用意した蚊取り線香では追いつかず早々に人間牧場から引き上げる事にしました。ウッドデッキで穏やかな初夏の瀬戸内をバックに記念写真を撮りました。
夕方からは人間牧場見学の帰路、近所にある潮路という馴染みの店に前もって予約を入れ、関さんと藤原さんを交えた食事会をしました。女将さんに「滅多に食べれないものを食べさせて」と言っていたので期待をして、人間牧場を下りました。料理屋さんは人間牧場から約十分足らずの場所にあって、国道沿いの二階にある小粋なお店です。ここを選んだ理由は魚が美味いことに加え、夕日が窓越しに手に取るように見えるからです。
予約しておいた午後6時半きっかりに店に着き、部屋に入って驚きました。料理の凄さに目を見開きました。何よりも驚いたのは超特大の岩牡蛎の刺身です。これほど長い間海沿いで暮らしていてこれ程の牡蛎を見たことも食べることも初めてなのです。最近この岩牡蛎が繁殖して漁師さんもホクホクだと伺いましたが、私たちもそのご相伴に預かり舌鼓を打ちました。関さんも藤原さんも舌の肥えている人なので、満足いくかどうか心配しましたが、ご満悦なご様子でホッとしました。
お二人とも軽く生ビールをたしなむほどで、飲むほどに酔うほどにとまではいきませんでしたが、積もる話しをさせてもらいました。
部屋の窓越しに夕日が見え最高の雰囲気になりました。人間牧場もさることながら日本一と自認する双海の夕日も見て欲しかったのですが、この日は100点とまではいかなくても、それなりの夕日が山口県平郡島辺りに沈んで、穏やかな初夏の海と空を染め分けました。関会長さんも藤原さんも窓を開けデジカメで盛んにシャッターを推していました。私はもっぱらお二人の接待お相手なので、田宮さんに私のカメラを渡して撮ってもらいました。田宮カメラマンがとらえた夕日の写真です。刻々と表情を変える夕日の姿を見事に撮影していました。
(太陽の光が水辺に尾を引く残照の瀬戸内)
(明るい空と海の色が何ともほのぼのとした明日への希望を感じるような夕映えです)
(雲を赤く焦がし山口県平郡島辺りに今まさに沈まんとする初夏の夕日)
夕日と食事に満足して料理屋を出た私たちは最後の楽しみである翠小学校近くのホタルを鑑賞に出かけました。関会長さんのたっての希望でもあるので、何としてもホタルを見せたいと意気込んでいたものの、ほたる祭りは先週終わり、もうそろそろ最後かと半分半分の気持ちで出かけましたが、どうしてどうしてほたるの名所唐子橋近くではまだ沢山のほたるが乱舞して幽玄の世界を演出してくれました。この日はほたる見学者も沢山いて、運良く出会った近所に住む高田さんの話によるとほたるの数は最盛期の三分の一だそうですが、いやあ安心しました。
遠来の恩人に人間牧場、海の幸の食事、日本一と自認する夕日、そしてほたると今日のメニューは4本立てでしたが、関会長さんや藤原さんがどう思ったか知る由もないことながら、ささやかな恩返しができたとホッと胸を撫で下ろしました。
二人をほたるの現地で送り、シーサイド公園で田宮さんと別れて家に帰った私は妻を連れて再びほたる鑑賞に出かけました。暗闇の中二人で鑑賞するほたるはまた格別でした。その様子をカメラに収めることができなかったのが返す返すも残念でした。
「恩人に 見せたい物を 四本立て すべて段取り 上手くいったね」
「恩返し こんなことでは いけないが 心だけでも 分って欲しい」
「今日からは 心新たに 踏ん張って 強く生きよう 今まで以上」
「子どもらが 植えし芋ツル 早伸びて 草に負けじと 青々繁る」