○玖木の一日橋めぐり・玖木地区(20-6)
四万十市西土佐玖木は戸数20戸ほどの小さな集落です。今回の旧西土佐村集落講演会のシリーズもいよいよ本格化し始めましたが、20-1回目が玖木地区でした。一回目の感想や様子はブログで紹介していますので省略しますが、その集落講演会が縁で「玖木の一日橋めぐり」という小さなイベントが誕生したのです。そのイベントを実施出来たのは区長さん始め多くの地域住民の「何とかしなければ何にも始まらない」という熱い想いでした。そしてその活動をサポートしたのは産業課の中脇さんと藤倉さんの二人の女性でした。イベントを開くための準備会を開き、案内パンフも、玖木までの道筋に看板をかけるのも二人がお手伝いをしました。勿論地域住民が主役で食材を持ち寄り、柴もち作りの技、藁細工の技を持ち寄り、雨の日メニューまで用意する周到さです。この日は期待した梅雨明けもなくあいにくの雨模様でしたので、参加キャンセルが相次いで人数的には少なかったようですが、その分地域の人や参加者が主役になって和気藹々の集会となりました。
「えっ、橋なんてグリーンツーリズムの地域資源になるの?」って疑問が返ってきそうですが、足元を見れば玖木地区には何と大小取り混ぜて20もあるのですから驚きですし、その橋も四万十周辺にしか見られない珍しいものがいっぱいあるのです。傘を差しながらマイナスイオンの中を橋に向かって歩きました。私も20年来旧西土佐村へはやって来ていますが、こんな小さな集落へ足を踏み入れるのは初めてだし、橋の存在さえも知りませんでした。聞くところによると玖木地区には紹介されていない小さな沈下橋が三つもあるのです。
四万十川の写真に必ず出でてくる沈下橋は、橋の欄干も無い簡易な橋です。大雨で川の水量が増えると濁流が平気で端を乗り越え沈下するから沈下橋と名前がつけられているのですが、最後の清流という代名詞を持つ四万十川にはどんな立派な橋よりも沈下橋がよく似合うのです。下の写真は最初に訪ねた沈下橋です。
橋のたもとには橋の戸籍とでもいうべき判読が難しくなった古い木板が》立っていました。中村から参加したという女性にお願いして、遊び心で芸術的な写真を一枚撮りました。どうです。雨の中の沈下橋の上で赤いパラソルを差し一人たたずむ女性の姿は何とも旅情を掻き立てます。この日は折りからの雨で四万十の支流黒尊川の水量も多く、川面は絹のような薄い霧に煙っていました。
少し上流まで歩いていくと紅葉の新緑が目に入ってきました。秋の紅葉の頃はここが一番のスポットになるそうですが、紅葉の新緑も絵になる光景で瀬音ゆかしい姿を見せてくれました。この橋を渡って林道を進むと2時間ほどで宿毛市へ行くのだそうですが、秋には是非錦織なす美しい意紅葉を見たいものです。
公民館へ帰ってから午前中の最初のプログラムである藁草履作りに挑戦しました。用意してもらった藁を木槌でドンドン音を立ててほぐし、地元のおじさんやおばさんの指導で藁草履を作るのです。地元の人でも藁草履を履いた経験や親から作ってもらった思い出はあっても、自分で作るのは初めてという人もかなりいて、ワイワイガヤガヤとにかく蜂の巣を突付いたような賑やかさでした。地区外から小さな子どもも参加していて久しぶりの子どもの歓声に地区の人は目を細めていました。想像していたよりは難しい草履を幾つか完成した頃には村内に昼を告げるチャイムが鳴っていました。
さあお楽しみの食事です。今日のメニューは山菜の天ぷら、きゅうりと芋茎の酢の物、豚汁、アメノウオの塩焼き、それに白いご飯となかなかのご馳走です。その全てをパチリ写真に収めました。
この日のために作ったという竹の食器はまるで「おひつ」かと思わせるような孟宗竹の丼鉢で重くて腕がダルほどでした。天ぷらの衣に味付けをする独特の調理法で全て美味しく召し上がりました。特にご飯は美味しくみんなお代わりをしたり返りにはお結びを土産にとって帰るひともいるほどでした。この手のイベントには
つきもののアルコールが出ないことも私には満足でした。その代わりにお茶の葉っぱを火であぶって煮立てる即席茶は本当に美味しい山村の現場でしか味わえない味でした。
おばあちゃんが、石臼を持参しました。トウモロコシの乾燥した種を粉にするのです。私たちの子どもの頃はばあちゃんに頼まれて石臼を挽いた経験があり懐かしく思いました。2回回して何粒ずつか穴に入れる作業は気の遠くなるような作業ですが、それでも臼ですり潰したキビの粉が臼の回りに出ると嬉しくなって回したものでした。このキビ粉は午後の柴餅の中に交ぜて使うのです。おばちゃんの粉を挽く姿に死んだ母や祖母の姿が重なり、懐かしい思い出いっぱいになりました。
お昼の時間を利用して篠田幹彦さんに誘われ奥屋内の炭窯づくりを見学に行きました。8人ほどがショベルカーを使って炭窯周辺の整備を行っていました。懐かしい顔ぶれに出会いここにも田舎でどっしり生きてる人々の活動を見せてもらいました。わが人間牧場と同じく屋根は節を抜いた竹を交互に組んで屋根に葺いたりしていましたが、切り時の良い竹を葺いた炭窯も中々味のある出来栄えのようでした。
公民館に戻り出来たての温かい柴餅をいただき、再び橋めぐりに出掛けました。沈下橋に出た所でカヌーで激流下りを楽しむ松山から来たという一団に出会いました。彼らは雨の中でアウトドアスポーツを楽しんでおりみんな感心して見とれていました。
橋めぐりの最後は橋が流されている場面で終わりました。何でもこの橋は増水時に引き上げられるという何とも奇妙な板橋ですが、このところの増水で橋が流されワイヤーでくくって川岸にあるのを見ました。いやあ、実に橋めぐりは楽しいイベントでした。
「それぞれの 橋に名前が あるのです 向こうとこっち 想い結んで」
「あいにくの 雨で橋上 昼寝する 夢は叶わず 次の機会に」
「これ程の 橋を活かせば 必ずや 人は見に来る みんな頑張ろ」
「雨だから 出来る仕事を 黙々と 炭窯造る 姿に感動」