〇竹製吊り篭
いつの頃からかは定かではありませんが、プラスチック製品が出回るようになり、私たちの身の回りの暮らしは随分便利になりました。傷んだり壊れたりすれば安価なため代替品を買うといった使い捨て時代を反映して、ゴミ収集場所には毎日のように沢山のプラスチック製品がゴミとして出されています。
私たちが子どもの頃は家庭用品として竹製藁製の籠がそこここにありました。今は見ようとしても見れないほど激減して、特に竹製の籠類は東南アジアの国々から輸入さてている物が多いようです。昨日親類の漁師をしていた叔父が、棄てる予定で外に出していた竹製の吊り篭を2つ貰い受けて持ち帰りました。
私が子どもの頃、学校に行く通学路には下駄屋さんとか桶屋さんなどの店が並んでいて、店の中からご主人が器用に独特な道具を使って下駄や桶を作っていました。その見事な腕さばきに見とれたものでしたが、時折やって来るお客さんがお金を払うと、天井から吊り下げた竹製の吊り篭から釣銭を取り出して渡していました。このお店にはレジも金庫もなく、吊り篭が唯一の金庫替わりだったのです。
また、夏になるとばあちゃんは吊り篭の中に布巾を敷いた上に炊いたご飯を盛り、その上に布巾をかけて天井から吊り下げていました。冷蔵庫や保温ジャーのなかった頃は、ご飯が高温で腐らないよう工夫をしていたのです。また夏になると冷蔵庫がなかったので、吊り篭に色々な物を入れ、涼しい井戸に宙吊りもしていました。
貰い受けた吊り篭は、私たち現代人は真似ができないほど精巧に竹を編んで作っていて、昔の人の手仕事に感心しながらシュロ製のたわしで丁寧に水洗いし、天日に干して乾かしました。この竹製の吊り篭は海の資料館海舟館の展示品として大切に保存する予定です。
「何時ごろか 定かでないが 竹製の 籠に代わって プラスチックが」
「子ども頃 通学途中の あちこちに 桶屋や下駄屋 あった記憶が」
「下駄屋さん 天井吊るした 竹の籠 金庫替わりに 使っていたっけ」
「懐かしい ただそれだけで 消えて行く 便利だけれど 寂しい気持ち」