人間牧場

〇こそ丸という薬の裏話

 刑務所に服役している人も私たちと同じように風邪を引いたり、お腹が痛くなったりします。その都度刑務官に申し出てお薬を貰って飲むそうですが、その薬代は全て国費で賄われるため仮病を使う怠慢な服役者もいて、病気かどうか外見上は見分けがつかず、薬代が運営費を圧迫するので、飲んでも害にならない小麦粉をオブラートに包んで偽薬を作り飲ませたところ、薬だと信じて飲んだ80%の服役者に薬が効いたそうです。

こそ丸の容器

 これはある創作落語「小麦粉も信じて飲めばお薬に」の一節ですが、私の愛用し持ち歩いている「木になるかばん」の中に、「こそ丸」という薬入れのプラスチック容器が入っています。ラッパのマークの胃薬「正露丸」を思わせる「こそ丸」というこの薬は、数年前友人から貰った物です。新聞の片隅に「夕方のテレビニュースでこそ丸のことが紹介されると、申し込みが殺到し売り切れた」という話でしたがその数日後、広島に住む親しい友人が一個送ってくれました。

こそ丸の効能書き

 届いたこそ丸のキャップを取るとお薬らしきものは入っておらず、A4の効能書きが出てきました。薬品名の由来「親がおればこそ、子がおればこそ、主人がおればこそ、妻がおればこそ、友だちがおればこそ、写真がおればこそ、社長がおればこその『こそ』です。」の横に、「錠剤が見える人と見えないひとがいます」と書かれていました。なるほどと納得して効能書の成分(愛情、謙虚、感謝、元気、但し配合・割合については企業秘密)、薬の効果、服用の仕方、副作用、お値段(105円)、追記、製造(財団法人操風会岡山旭東病院)と書かれた文章を読みました。

 最後の「特許」森岡まさ子(広島府中市上下町MGユースホステル創始者・平和の伝道師)を読んで納得しました。森岡さんは既に他界していますが晩年上下町で出会い、「会う人も会う人も福の神」と書いたハガキをいただきました。以後私はこの言葉が好きで、自分の出版した「昇る夕日でまちづくり」や「今やれる青春」という本にサインを請われるとよく書き、毎日3枚書いているハガキにもこの言葉を好んで書いています。人は目に見えるものを見ながら生きていますが、目に見えない心情も大事で、目に見えない優しさや想いを持つと人生は豊かな心で生きられるのです。

 2日前、西条市中央公民館で開かれた地域教育東予ブロック集会開会式でいきなりあいさつするよう指名され、思いつくまま木になるかばんから「こそ丸」の容器を取り出し、「コロナ禍における今こそ目に見えない大切な忘れ物に気づこう」とアドリブながら話しました。取るに足らない私の話でしたが、どうしてどうして参加して私の話を聞いた高校生など多くの参加者から、「目に目にない大切なものに気づかされた」と10指に余る心温まるメールをいただきました。こそ丸という薬の裏話でした。

「わが愛用 木になるかばん 入れている こそ丸薬 これがおもろい」

「友人に 貰ったこそ丸 容器には 効能書きのみ 薬が見えぬ」

「集会の 開会式で こそ丸の 話をしたら 沢山反応」

「本当は 見えるものより 見えぬもの 大事と教え 納得しつつ」 

 

 

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