〇イチョウの木の伐採
私の妻は、私より1歳年下です。私は60歳で定年を迎えた時、再就職もせず自由人の道を選び、既に13年が経過しようとしていますが、妻は72歳ながら未だに近くの歯科医院へパートとして請われるまま、「もうそろそろ」と毎年言いつつ勤めています。勤めている歯科医院には75歳の大先生と45歳になる息子の先生がいますが、家の近くに私から見ればほんの猫の額ほどの、小さな家庭菜園を持っていて、職業がら日常的に憂さ晴らしすることもできないため、その家庭菜園に野菜苗を植えて楽しんでいるようです。
その畑の隅に根元が胴回りほどのかなり大きなイチョウの木があり、大きくなり過ぎて畑に日が当たらないので、枝を切ることにしたそうです。脚立を立てて登って小枝を切ったりする作業を、この2ヶ月ほど寸暇を惜しんでやっていたようですが、樹高が高いため先生親子の手におえず、家の近くの人に助け舟を出して手伝ってもらったものの、思ったほど枝は切れなかったようです。梯子がもう一本欲しいと言うので、わが家の脚立を持って行ってあげましたが、これもどうやら焼け石に水の雰囲気でした。
昨日の昼、仕事から帰った妻が見るに見かねて、私に協力要請がありました。早速先生に電話をすると「お願いします」ということで、昼ご飯も食べず倉庫からチェンソーを取り出し、トラックに積んで近くの保育園まで出かけました。先生親子が下から見上げる中、私はチェンソーを持って梯子を登り、3mもあろう樹上でエンジンをかけ、太ももほどもある枝を切り落としました。その後地上に降りて切り倒した枝を、片付けれる程度の長さに小切りして1件落着です、ものの20分ほどの素早い私の作業を、先生親子は目を丸くして見ていました。
根元から切らなければまた同じように芽を吹き、同じように木陰を作ってしまうので、必要なければ根元から切った方がいいとアドバイスをしましたが、せっかく育った木を切るのが惜しいのか、私にそれ以上の無理をさせたくないと思ったのかは分かりませんが、使った道具類を片付け、お貸ししていた脚立を担いでトラックに積みわが家へ帰りました。あっという間に帰った私を見て妻は驚いたようでしたが、これが田舎の便利屋と言われる人間の早業です。少しだけ汗をかき「いい仕事してますねえ」でした。
「ご近所の 妻が勤める 歯科医院 猫の額の 小さな菜園」
「イチョウの木 30年で 太くなり 畑を陰に するから枝切り」
「重いもの 持ったことない 親子ゆえ 樹上の枝を 切りたい切れない」
「チェンソー ブンブン回し 樹上にて いとも簡単 イチョウ枝切り」