〇今年の夏エトセトラ(その5)
・庭木の剪定
親父が死んで1年が過ぎました。親父が生前わが家の庭に植えている庭木の手入れは、器用だった親父の手に委ねられていましたが、今年からはその役目が私に回ってきました。ヤマモモやクロガネモチ、山茶花などの雑木は刈り込み用の大きな鋏でバチバチと切れば、どこからでも芽を吹きますが、こと黒松となるとそういう訳にも行かず、専門の園芸庭師さんに頼むべきかどうか迷いました。でも1人役2万円以上もする賃金が勿体ないと思い、私がすることを決意しました。
わが家には大小10本以上の黒松が庭に植えられていて、念入りに剪定手入れをすると1本だけでも1日以上かかるものもあるのです。晩年親父は脚立を2本立てて足場を組み、その上に上がってやっていましたが、私はまだそれ程足腰が弱っていないので、脚立にいきなり上がって、木の上の枝から順次ハサミを入れて杜長枝を容赦なく摘み落とし、古葉をむしって行くのです。黒松の厄介なのは松葉がとがってチクチクささり、また松のヤニが黒く指先につくと、手を石けんで洗っても中々落ちないのです。
今のところ軍手をはめてやっていますが、親父は存命中素手でやって、黒松の剪定が終ったころには、手の指や甲が松やにで真っ黒になっていました。私はまだ少し人の前に出る機会があるので、親父のようには行きませんが、やがて親父と同じ運命を辿ることでしょう。剪定ハサミを砥石で研いだり、剪定屑を集めて掃除をしたりしながら、隠れた部分で親父はこんなことをしていたのかと思い知らされる夏です。それにしても私の剪定技術はまだまだ未熟で、親父の足元には死ぬまで及ばないと思いました。
「庭植えた 黒松剪定 思いつき やっては見るが 中々できぬ」
「日当が 二万円にも なる庭師 雇わず自分 見よう見真似で」
「残す枝 切って後悔 するばかり 新芽を期待 しながら次へ」
「見えぬとこ 親父働き 家守る 今更ながら 頭が下がる」