〇冬の味覚寒ブリ
私の古い親友に宇和島嘉島の宮本正勝さん、愛南町内海の加畑仁一さんがいます。宮本さんは養殖漁師ながら和歌を詠む文化人だし、奥さんは漁協女性部の会長さんをしていましたが、息子さんを亡くし養殖を断念して、今は関連の仕事をしています。加畑さんは真珠養殖業を営み内海村の村長さんを務めた人です。いずれも私が尊敬する立派な方で、もう20年来正月が近づくとカキやハマチを宅配便で届けてくれるのです。
宇和海の魚類養殖業は日本一で、特にハマチは養殖業が確立してブランド化され、高級魚の呼び声高く、私の大好きな食べ物です。前日は宮本さんから先に届いた約5キロもある養殖寒ブリを、大きな出刃包丁で捌きました。私は漁師町で育っているので魚の調理は手際もよくお手のものなのです。特に骨切りの必要な夏の鱧や、寒ブリのような大きな魚は、退職してからこの9年間は、もっぱら私の仕事として位置づけられていて、何の疑いもなく粗調理を一気に引き受けているのです。
氷詰めされた丸々太った寒ブリはまず頭を切り落とします。そして腹を開けて内臓を取り除き、綺麗に水洗いします。頭はまるで手術のように出刃包丁を入れて半分に割り、鰓の部分を取り除きます。この時出るカマと称する部分は、塩焼きにすると最高なので、綺麗に取っておくのです。その後胴体を3枚におろし、身からヒハラの部分を取り除きます。このヒハラがいわゆるマグロでいうとトロの部分なので、これも刺身用に確保します。骨は煮物用に小切りします。
それらを部位毎にタッパーに入れてラップをかけ、まな板や包丁、流し場をタワシを使って綺麗に水洗いし、ゴミ出しをして一件落着、私の仕事を終えるのです。妻はそれを急いで冷蔵庫に終い夕食時刺身とブリ大根を作ってくれました。刺身のツマも自家野菜である大根の千切りを使います。刺身は生姜のすりおろし、ブリ大根は生姜の千切りを入れて煮付けているので、臭みもなく美味しくて、白いご飯をお替りするほど食欲が進むのです。昨日は加畑さんから高級魚カンパチが届いたようです。今晩はまた私の腕でしっかりと調理して、その味をせいぜい楽しみたいと思っています。
「正月を 前に寒ブリ 届きたる 宅配便が 来る度ニヤリ」
「出刃包丁 用意周到 寒ブリを 三枚おろし 妻に手渡す」
「食卓に ブリ大根の 煮物添え 刺身並んで 至福夕食」
「田舎ゆえ こんな贅沢 今晩は カンパチ刺身 たまらんたまらん」