人間牧場

〇自ら労して自ら食うは人生独立の本源なり

 車に乗ればつけたカーラジオから、部屋にいるとつけたテレビから、国会中継で予算委員会の模様が聞こえたり映し出されたりしていますが、只今の話題は何といってもTTPの問題のようです。安倍総理が渡米してオバマ大統領と交わした約束文書を盾に、聖域なき関税撤廃から国益を守ると大見得を切れば、もしその約束が守れない場合はどうするのかなどと、国益より政党益や自己益がからんで、賛成と反対の議論が戦わされています。今回のTTP問題はその中心が農業問題で、ただでさえ40パーセント以下に下がった農業の自給率や、過疎と高齢化、所得低下の渦中にある農業を、守ってゆくことは容易なことではありません。

 日本の農業問題は、日本が高度成長の波に乗って工業化の道を進み始めた頃に遡ります。田舎から工業地帯へ大量の労働力が移動し、田舎は過疎、都会は過密といった現在の構図ができ上がったのです。日本人の暮らしが豊かになり、食生活が欧米化すると米中心だった食生活が、パンや肉に変わりました。食べなくなった米余りをを解消するため、政府は減反政策という後ろ向きの農政を始め、米を作らない農家に否応なしに減反を補助金で押し付け、今もその政策は水面下で続いているのです。
 農業の現場である田舎に暮らして、農業の現実を目の当たりにすると、今に日本の農業は潰れるという危機意識を実感せざるを得ない所まで来ているようです。

 TTPは輸出入に頼る経済界が賛成し、自給率を堅持する農業団体が反対という利害関係の構図になっていますが、自由貿易か保護貿易か、中立的な私たち消費者も正直なところ見えてこない部分があって、夏の参議院議員選挙をにらんだ与野党の、冷めた駆け引きだけでは終らせたくないと思っていますが、はてさてどんな方向に進むのでしょうか。
 明治の思想家で教育者である福沢諭吉は「自ら労して自ら食うは人生独立の本源なり」という言葉を残しています。料理ならいざ知らず、食材を自ら労して確保することは容易なことではありません。私も多少の菜園を持って食材を自ら労して作っていますが、自給できているのはジャガイモとタマネギ、サツマイモ、夏野菜と冬野菜くらいなもので、リンキャベのキャベツもリンゴもその殆どを買い求め、食べて健康を維持しているのです。

 それでも私などはまだましな方で、梅酒や梅干し、蜂蜜やブルーベリー、甘夏みかんなどの山の幸に加え、海の幸であるワカメや天草なども採集して確保し、一年中その恩恵に浴しているのです。そんな自給暮らしに今度コンニャクが加わりそうです。昨日何げなくパソコンネットを動かしていると、コンニャクの作り方がヒットしました。人間牧場ができて畑の隅に植えていたコンニャクイモが大きく成長し、昨年の秋に彫り上げて倉庫にしまっていますが、そろそろコンニャク作りを楽しもうかと思い始めています。私はコンニャクが好きではなく殆ど食べませんが、妻は大好物なのです。たかがコンニャクを作ったからといって、独立の本源等と大きなことは言えませんが、それでも気持ち的にはそういう方向に向いていることは確かです。昨日近況を尋ねるため携帯電話をかけた高知県馬路村の親友木下さんも、今年から田圃を借りて米つくりに挑戦したいと、私と同じようなことを言っていました。

  「コンニャクを 作る準備を 始めたる 独立本源 進む気概で」

  「TTP 田舎者には 分からぬが 先生たちは 躍起になって」

  「春が来た 自ら労し 食うもの作る 安心安全 お裾分けする」

  「雨風に 当らず部屋で 外を見る 評論批評 ばかりを恥じる」

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