〇愛媛大学教育学部長三浦先生と人前で対談をしました(その3)
私がまだ駆け出しの公民館主事だった頃、「連帯を育む教育はいかにあるべきか」というテーマで、鼎談をやるからその1人として参加して欲しいという誘いがありました。2人でやるのが対談、3人でやるのが鼎談くらいしか知らない浅はかな私でしたが、何にでも面白そうだからと首を突っ込みたくなる性格から、前後の見境もなく引き受けてしまったのです。鼎談の相手を聞いて驚いたのは、愛媛県小中学校長会長と国立愛媛大学教育学部長でした。愛媛県公民館連絡協議会主事部会長とはいいながら、何の肩書きもない平の主事の私が何故鼎談者の一人に指名されたのかは今も闇の中ですが、一日がかりの鼎談の模様はテープお越しされて、分厚い箱入りの本になって今も書斎書棚の隅に汗顔ながら残っているのです。
鼎談が始まる前、教育学部長さんが私に、「若松先生はどこの学府をご卒業ですか?」と唐突な質問をされました。私は人の値打ちを学歴で測っていることに少し苛立ちを覚え、「はい私は公民館大学に在学中です」と学歴詐称のような言葉を返しました。学部長さんは首をかしげ、「はてそんな大学何処にありましたかしら?」と、軽くいなされました。
やがて鼎談とお礼に設けてもらった食事会が終わり、会場を後にして玄関を出ると、学部長さんが追いかけてきて私に、「若松さん私はあなたに何処の学府を出ているか等と、大変失礼なことを申しました。私は職業柄、その人の値打ちをついつい学歴で推し量るような癖になっていました。あなたの言うように人間は学歴ではなく学習歴だと思うのです。お許し下さい」と深々と頭を下げられました。
何の学歴もない私は以来ずっと、学歴を問われる所へは行かないようにしていますが、今もほろ苦い経験として脳裏に焼きついているのです。
偶然ですが、人間こそ違え愛媛大学教育学部長さんと私との対談が組まれました。色々悩みましたが、三浦先生の書かれた文章を新聞の四季録というコラムで読んでいたし面白そうなので、自分の低脳や浅学も省みずあっさり引き受けてしまいました。
結果は三浦先生の素晴らしい誘導で、何とか恥をかくこともなく約一時間の対談を無事終わることができましたが、大いに汗顔で、中身を反芻して文章にまとめることだけは記録に残るからするまいと、心の中に終いこみました。
それにしても三浦先生は実に人間的に味のある方で、一回会っただけなのにもう100回も会ったような感じのする、また会いたいと思う人でした。