○人間牧場ウッドデッキ防腐剤塗りの後で(その3)
人間牧場・水平線の家の防腐剤塗り作業を始めた頃、一緒に作業していた息子が「お父さん風呂を沸かそうか」といって、ロケ風呂へ降りて行きました。防腐剤塗りの作業を急いでいて、風呂を楽しむ余裕等ないと思いつつ、私はただひたすら防腐剤を塗る作業を影の部分でしていました。しばらくするとロケ風呂から風呂を沸かす長閑な煙が立ち上がりました。しかし煙の臭いは防腐剤の強烈な臭いにかき消され、ウッドデッキまでは届きませんでした。2時間余りの作業が終わり、残った防腐剤を一斗缶に移し替え、使った刷毛や道具類を倉庫の中に終いました。
自分では気がつかなかったのですが、いつの間にか被った麦藁帽子も作業着も、手袋も全てが防腐剤の臭いに埋まって、自分の鼻が可笑しくなったような気分でした。息子の出したロケ風呂入口付近の、風呂が沸いたことを示す暖簾が、初夏のさわやかな風に揺れていました。息子は早速少し熱めに沸いた風呂に水を入れて薄め、五右衛門風呂の浴槽にゆっくりと体を沈めて、入浴を楽しんでいました。「お父さんも入ったら」と勧めてくれたので、着替えは持っていないけれど、温もるだけでもと思い切って裸になり、息子に続いて風呂に入りました。眼下に広がる伊予灘の海や豊田漁港の様子が手に取るように見えて、まさに絶景かな、絶景かなの手合いでした。
息子は自分で設計して造ったこのロケ風呂がとても気に入っていて、時折一人で人間牧場へやって来て、薪で風呂を沸かし入浴を楽しんでいるようです。私はそんな面倒くさいことはせず、例え風呂を楽しもうと思っても、備え付けの灯油ボイラーで沸かすのですが、息子も凝り性で薪で沸かした風呂がいいのだと、盛んに強調しているようです。
瀬戸内のオーシャンビューを楽しみながら、自分の息子と二人で風呂に入れる幸せはこの上ないものです。これからも折に触れて風呂を楽しみたいと二人で話しながら、西の空に落ちかけた夕日が隠れ家風の格子窓から差し込む優しい光に照らされました。