○急がば回れ
目的地に向かって急ぐ時は頭の中がパニックになって、どうしたら最も早くそこへ到達することができるか、頭の中の回路がまるで目的地までの道順を探すカーナビのようにぐるぐる回るのです。その結果得た結論の道順を走るのですが、結局は行きどまりであったり、渋滞に巻き込まれたりしてかえって到着が遅れたことは過去に何度もありました。その轍を踏まない唯一の方法は余裕を持って早めに出発したり、予測される情報をし入れておく以外にはないのですが、日々忙しく過ごしていると、分かっていても大まかな目安だけで突っ走ってしまうのです。
一昨年人間牧場で開いた逆手塾の折、深夜になってどうしても早く高松まで帰りたいので「人間牧場から下の国道へ出る近道を教えて欲しい」とある女性から頼まれました。その友人に「その道は私以外は通れないから止めた方がいい」と止めたのですが、「若松さん、私もこんな田舎で育っているので車の幅さえあれば大丈夫」と人間牧場で書いた略地図を元に降りて行ったのです。小一時間も経ったころでしょうか。その女性から半泣きの電話が入りました。車を溝に突っこんでタイヤがパンクしたというのです。「今どこだ」といっても「暗闇なのでどこか分からない」と必死に救出要請をするものの場所は分からず、JAFの救助車がこちらに向かっているものの、谷間なので携帯電話も使えないようでした。
地元の地理に詳しい人間は私一人で、私は塾の運営に当たらなければならない最中だったので、私たちのメンバーが逆手塾のスタッフを連れて思い当たる場所を探すのにこれまた一苦労でした。結局見つけたもののパンクタイヤを交換修理することもできず下道までそのままガッタンゴットンと車を走らせ、JAFの車と合流しました。深夜に大騒動したため近所の人に迷惑をかけるし散々でしたが、車を役場前に置いて彼女を松山のJRまで連れて行き、一番の高松行き列車に乗せた頃には東の空が明るくなっていました。
その日逆手塾が終わってから私は地元の車屋さんに車を取りに来てもらいましたが車の損傷はパンクだけではなくかなりの損傷で、修理代は10万円近くにもなって泣きっ面に蜂という感じでした。修理を終えた車をバツが悪そうに後日取りにやってきました。その時彼女の口から「急がば回れでした」としみじみ話されました。
一昨日の私もそうでした。午前中大学へ出かけて打ち合わせなどをやって気がつくと、日本銀行での昼食会予定20分前になっていました。農学部キャンバスのある樽味からだと20分もあれば行けると鷹を喰っていました。しかし少しでも早く到着しようと今まで通ったこともない近道を通りました。ところがその狭い道へ運転未熟な若葉マークの女性の車が迷い込んで、トラックと離合することをためらい、双方の後ろに長い車の行列ができてしまいました。本線出るための信吾は本線優先のため短く、結局日銀松山支店に到着したのは30分後でした。幸い皆さんは私の到着を待ってくれていましたが、頭をかきながら恥をかいてしまいました。あの時本線さえ走っていたらと後の祭りを「急がば回れ」と悔やむのです。
結果が全てですから、次からはしっかりと余力を持って日々を暮らしたいと思いました。ああそうそう、これは何も時間的なものだけではなく、人間関係だって仕事だって性急な結果を求めようとし過ぎると、失敗することがあるのでご用心ください。
「昔人 急がば回れと 説いている 心の焦り なきよう留意」
「人ならず 自分も何度 したことか 急がば回れ 拳拳服膺」
「近道を したのに後ろ 走ってた 車が前に 何時の間にやら」
「慌てない 戸口出る時 妻が言う 携帯忘れ 急がば回れ」