○秋来ぬと目にはさやかに見え始め
気がつけばいつの間にかわが家の庭にも遅い秋がやって来ているようです。わが家は田舎らしく家庭菜園を含めると660坪もあって、裏山は自然を生かした築山のように急峻な山が家の近くまで迫っているのです。その裏山には昔から柿の木が4~5本あって、このころになると柿の実が黄色みを帯びて色づいて秋の風情を彷彿とさせています。この柿の木はどちらかというと土止めのような形で植えられていて、柿を収穫するためではないので、親父が適当な時期に適当に選定するものですから、実の成りもバラバラですが、それでも秋になると家で食べるくらいの柿の実は収穫できるのです。
秋といえば何といってもこちらではツワブキと野菊です、海沿いの町らしく家の周りには沢山のツワブキが自生していますが、その殆どは面倒くさいので草刈りの時に草刈り機の餌食になって刈り取られますが、植物の生命力は凄いもので、その後また芽を出しこのころになると黄色い花をつけて存在感を誇示しているのです。わが家の周りにはいつの間にか無数の黄色い花が秋が来たことを告げるようにいっぱい咲いています。このまま放っておくと来年の春には綿帽子をかぶったような新芽が出て、皮をむいて食卓を賑わす一品になるのです。
ツワブキという名前の由来はその葉っぱがつやつやしていることからつやぶき=ツワブキとなったという説がありますが定かではありません。菊科の多年草で直径5センチほどの可憐な黄色い花がとても可憐です。この花が咲くのは11月3日の文化の日を挟んだ時期なので、歳時記にも度々登場しますが、わが町の海岸線には至る所に群生して咲く姿が見られるのです。
草刈り機が届かず刈り残した背丈より高い位置に野菊がいっぱい咲いています。菊といえば大輪の大きな花を連想しますが、野菊はツワブキと同じようにとても清楚な花で、控え目に咲く姿はどこか日本人の控え目なそれでいてつつましやかな女性の姿に似ています。この時期の野菊を摘み取って陰干しにし、枕に入れるのが菊枕といって、さわやかな香りが安眠を助けるそうです。この地方では損な風習はありませんが、南予ではそんな枕を作るのだとある人から聞いたことがあるので、一度試してみようと思っています。
わが家の畑の根菜類も大分大きくなって、いよいよ秋本番です。9月に播いた大根はもう腕首ぐらいに大きくなり、下ろし大根や煮物にも使えるようになりました。昨晩は妻が大根サラダを作ってくれましたが、初物の瑞々しい大根の歯触りは何とも言えない美味しさです。
ツワブキと野菊の咲く頃になると今は亡き母を思い出します。母が亡くなって49日頃にもこれらの花が野辺に咲いていましたし、母と過ごした今は人間牧場となっているみかん畑のドハ沿いにも沢山のツワブキや野菊が咲いていたのです。ああ懐かしや母の姿・・・・・。
「この歳に なって余裕の 野辺の花 そこここ見えて 懐かしかりけり」
「咲く野菊 そっと手折りて 持ち帰り 一輪差して 風流楽しむ」
「どの花も 色とりどりに 咲き誇り 綺麗でしょうと 言わんばかりに」
「今年こそ 野菊摘み取り 陰干して 枕作ろう 思いも新た」