shin-1さんの日記

○農地を購入して農業をやりたい奇特な人

 「若松さん、今日は家にいますか?」と7時ころ電話がかかりました。妻が電話に出て、「お父さん電話ですよ」と呼ぶので、7食事中で口の中に物を入れているため、少し長めのローカをわざとゆっくり玄関先に置いている電話のもとへ行き電話に出ました。松山近郊に住む友人で、3日前にもわが家を訪ね、相談に乗った矢先でしたので、「今日は午後から来客予定があって、昼までならいるよ」というと、「例の件ですが、迎えに行きますので、現地を見てくれませんか」というのです。

 3日前の彼の相談とは土地を買って農業をやりたいという相談でした。私はただでさえ厳しい農業を55歳になって敢えてやろうとする意志は大したものだと思いつつ、つい悲観的な話をしました。儲けなくてもいい農業は楽しいが、飯を食わなければならない農業は難し」というと、彼もそれは百も承知のようでした。彼は「松山平野が一望できる素晴らしい絶景の所に1町2反ほどの土地があって売りに出されている。千載一遇のチャンスなので、この土地を買ってニンニクや野菜を無農薬で育て、それに果樹を植えて果物を販売したい」と熱っぽく語りました。その言葉にまたも私は「農業でモノを作るのに見晴らしが良いことなど何の意味もない。果樹を植えるというが今年植えても収穫できるのは5年後で、それまでどうするのか。野菜は無農薬だと素人では殆どできない」と散々反論していたのです。彼は私の話に納得し帰り際「そりゃあそうですよね、あなたの言うとおりです」と諦めたような顔つきで帰って行きました。

 ところが今朝は、あれほど私にボロ糞に言われたにもかかわらず、候補地を見てくれというのです。「迎えになど来なくても私の方から行きます」といって9時に家を出ました。今日は天気も良く車の窓を少し開けて走るとさわやかな秋の風が心地よく車内に入ってきました。彼が経営する修理工場に車を置き、彼の運転する車に乗って5分ほどで、雑木と竹と雑草が生い茂る候補地へ到着しました。

 なるほど彼が言うように見晴は抜群のところにありました。候補地には舗装した農道が入っていて、竹林、雑木林、元畑と大まかな分類がされていて、半分はかなり有望な農地に見えました。しかし問題はこの荒れ地をどのように農地に戻すか、私がこの3年間苦労して人間牧場を作った思い出が蘇り、こりゃあ大変だと思いました。

 問題は金額と家族の理解、それに農業経営です。それとはなし家族に伝えているようですが、はてさて55歳の彼の熱い思いを家族が前向きにとらえてくれるかどうかです。また自動車修理工場を息子さんと営んでいるのですが、これから75歳まで20年間農業をした後の農業を誰が継ぐのか、これも大きな問題です。また金額も自分の老後を考えると、これまた大きなチャンスであると同時に大きなリスクも背負わなければならないのです。

 見学後彼の自宅、息子さんの自宅をそれぞれ訪問しましたが、今の幸せに満足せず次なる夢を追いかけている彼の姿に、かつての自分を重ね合わせながら色々と考えさせられました。途中彼の仲間がやっている窯元へ立ち寄り、間もなく開催される青年の船班長会の記念品をみつくろいました。赤トンボをあしらったマグカップの手ごろのがあって、20個ほど注文してお暇しました。

 人には様々な夢があります。人間はやはり夢を食べて大きく成長するのだと思います。外から見れば「何でそこまで」と理解できないことでも、その人にとってみればかけがえのないのが夢なのです。今度会った時は夢の実現に向けて大きな力にはなれなくても、ささやかな後押しをしてあげたいと思い彼と別れ、旧青年の家の森本先生に無理なお願いをしていた16ミリのフイルムを貰い、東京からのお客様を迎えるためわが家へと急ぎました。

  「農業を やりたいのだが 相談に 言われて二の句 継げずもじもじ」

  「儲けない 農業は楽 食うための 農業苦し それを説得」

  「見晴らしが いいので土地を 買いたいと 甘い言葉に 少しお灸を」

  「夢を追い 夢の実現 するために 真剣話す 姿勢活き活き」

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shin-1さんの日記

○小さい秋を見つけました

 昨日は久しぶりに予定が全空きでしたので人間牧場へ行き、草刈り作業をやりました。このところの雨の日が多かったせいか、水分をたっぷり含んだ雑草が勢いよく伸びて、一面緑色に覆われていました。前回の草刈りからかなり日数が経っているので、前回刈り残した所は草がかなり硬くなっていたので、思い切って草刈り機の刃を替えてて望みました。最近の草刈り機の刃は2枚2千円程度の鋸刃型で、我慢して使えば1年間は使え、昔のような2枚刃や3枚刃のように石や草片が飛び散り体に当たることも殆どなく楽に草刈り作業が行われるのですが、使い捨てのためもったいないような気もします。

 この時期の草刈りは主に3つの効果があります。ひとつ目は今年最後の草刈り効果です。春から夏にかけて勢いよく伸びる草を何度刈ったか分かりませんが、いよいよ今年最後の草刈りで、雑草はこれから来春まです深い眠りにつくのです。2つ目はハズムシの発生を防ぎます。この時期蛾の幼虫であるハズムシという尺取り虫が異常に発生して一夜にしてハズの葉っぱを食べつくすのです。黄色味を帯びたハズムシはよく見ると可愛いのですが、慣れない人は気持ちが悪いそうで、人のよく集まる人間牧場では敬遠されるので餌となるハズを刈り取るのです。もうひとつは別名泥棒草と呼ぶ2種類の草の除去です。このころになると泥棒草は結実してその実がズボンや服や軍手にやたらとまとわりついて落ちにくいのです。これは人間牧場の厄介者で、既に早いものは結実していて、昨日も少し作業服に付着して困りました。まあそんなこんなで昨日は新しい草刈り刃と、さわやかな秋の天気に助けられて作業効率がよく、朝9時から夕方4時まで刈ったお陰で殆ど全ての草刈り作業を終えました。

 途中電話が入り水産高校の先輩である玉井恭介さんが豆腐を持ってやってきました。彼は面白い生き方をしている人で、会う度に違った名刺を持ち歩いているのです。昨日は豆腐の宣伝です。大豆の豆を特殊な機械で超微粒子ノナにして豆腐を作ると、厄介者といわれるおからが出ない豆腐が出来上がるそうです。冷えたままのプリンに似た触感を味わいながら二人で試食してみました。確かに味はよく新製品の目安である発想、値段、健康、環境などをクリアしており売れるかも知れないと思いました。丁度昼時で弁当を忘れていたので、大好物の豆腐一丁をペロリ平らげてしまいました。玉井さんは当分豆腐の普及に力を注ぐようですが、豆腐の角に頭をぶっつけないよう注意をして山を下りて行きました。

 人間牧場もすっかり秋の気配です。山栗は色づいて落ち、ススキも秋の風を受けて涼しげに揺れていました。畑の隅で面白い秋を3つ見つけました。ひとつはキノコです。草刈りをしていて草むらで見つけましたが、何とも奇妙なキノコです。多分毒キノコでしょうが、その姿形の奇妙さに思わず見とれてしまいました。自然とはこんな造形物を作り出す力があるのかと感心しきりで、思わず草刈り機のエンジンを止めて見とれてしまいました。



 二つ目は私の地方ではチチモモという木の実です。多分イチジクの原種でしょうが、真黒に熟すとイチジクと同じ味がして美味しいのです。食べ物の少なかった子どもの頃はよく食べたものです。2~3個摘んで食べましたが昔懐かしい味でした。

 三つ目はカラスウリです。この牧場も昔はミカン畑でしたが、一時放任円園なって野生化したため、カラスウリの球根がやたらとはびこっていました。その名残のカラスウリのツルが夕顔のような花をつけ、結実したのです。カラスウリの実は青い頃は縞模様、稔ると鮮やかなオレンジ色になるのです。木に巻き付き実をつけたカラスウリはもう熟れていました。秋がだんだん深くなる人間牧場です。

  「草刈り機 音もさわやか 山々に 響き渡りて 斜面を進む」

  「見上げれば 空に雲行く 長閑なり 今年最後の 草刈り励む」

  「そこここに 秋の気配の 漂いて 熟れたウリなど 写真に収む」

  「芝栗の はじけて飛んだ 実を拾い ポケットいっぱい 大きく膨れて」

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