shin-1さんの日記

○親父の背中

 親父の背中におんぶして 海を泳いだ小学生の時 初めて親父の背中の存在を意識した

 親父の背中にしがみつき 沖に浮かんだ船まで浮き輪につかまるように泳いだ

 親父の逞しい腕が船のスクリューのように 勢いよく水をかき分けて進んだ

 親父は強い人間だと思った

 親父の背中が とてつもなく大きいと感じたのは 高校生の頃だった

 水産高校の実習船で遠洋航海に旅立った時 伊豆諸島辺りを通った

 大きなうねりにもまれる実習船のデッキで 親父が小さな漁船を操りながら生きた海を見た

 親父は凄い人間だと思った 

 親父の背中が危ないと感じたのは青年の頃だった

 ガンに侵されベットの上に寝かされた親父の背中を おふくろは湯気の出るタオルで拭いていた

 長くはないかも知れないと医者から聞かされた時 親父の背中に生きていてくれと心の中で叫んだ

 親父は偉大だと思った


 親父の背中が厳しいと感じたのはやはり青年の頃だった

 他愛のない親子喧嘩をして 家を出ると言い放ち家を出た

 行く当てもなく街中をさまよい 泣き付いた叔父に説得されて親父に詫びを入れた

 親父は冷たいと距離を感じた

 親父の背中が自分と同じだと感じたのは息子が誕生した時だった

 名前をつけ這えば立てと成長する息子を 諭しながら育てる時

 はじめて親父の願いが自分の願いと一緒であることを知った

 親父はこんなものかと同じを知った 

   

 親父の背中が小さくなったと感じるのは今朝だった

 親父は漁師の家に生まれ 漁師になるべくしてなり 漁師として海に生きた

 その間様々な難関に立ち向かいながら乗り切り 家族の大黒柱となって生きてきた

 親父はまだまだ生きていて欲しいと感じた 


 自分で見えない自分の背中の小さきを背中に感じながら 親父の背中と比較する

 親父は強いし凄いし偉大な背中を今も持ち続けている

  「親父とは 親父になって 自問する 親父の背中 やはり目標」

  「名も無きに 等しき親父 見習って 名もなく消える それもまたよし」

  「今日の朝 親父の背中 サロンパス 張りつつ思う ・・・・・・・・・」

  「ああ俺も いつかは息子 同じ目で 見られる定め 世のならわしか」

  

 

[ この記事をシェアする ]