○日脚が長くなった四万十界隈
先月末の予定が先方の都合で変更になったため、随分長い間のご無沙汰のような気がしつつ、県境を越えて四万十市西土佐へ入りました。抜けるような青くて高い空だった四万十川界隈の明るい夏のイメージはどこか遠のいて、観光客の姿も殆ど見られず何処か違った村へ来たような錯覚すら感ながら村の中心地にある役場を通り越して、西土佐大橋を渡りました。日脚が長く感じたのも束の間山里には早くも夕暮れが迫り、通り過ぎる人も車も急ぎ足のようでした。偶然にも旧友篠田幹彦さん親子に会って立ち話をしましたが、奥さんは高知へ出張とかで留守とのこと、共稼ぎの苦労を垣間見るようでした。
役場で中脇裕美さんと藤倉育さんと出会い、夕食のためいつものように岩木食堂の暖簾をくぐりました。この食堂もすっかり顔なじみとなって、私の口に合う料理をいつも出してくれ嬉しい限りです。お客さんの多い料理屋はやはり味と真心があるのでしょうか、田舎の食堂ながらひっきりなしにお客さんが入っていました。
その目と鼻の先に昨晩の集会所はありました。田舎に行けば行くほど人の集まりはよく、この集落も区長さんが熱心と人目で分るほどに20人もの人が集まりました。どの集会所に行っても思うのですが、やはり熱心なリーダーがいる所は人の集まりもよく、聞く態度もしっかりしているようです。
区長さんが面白い道具を持っていました。どうやら公民館のカギのようですが、一枚の板にカギを布紐で結んで、誰が見ても分るようにしているのです。私が管理している灘町集会所のカギは20以上もカギがあり、その都度どれが何処のカギか何度も細かい字を暗闇で見ながらやらねばならず、慣れるのに随分苦労をしました。今は大体分るようになりましたがこれは妙案だと思い、早速写真に撮らせていただいた次第です。
集会所へは公用車で出かけますが、道すがらその地域のネタを中脇係長から聞きながら車を走らせます。「この集落ではどんな特徴があり、どんな面白い話題があるか」聞くのです。そしてその仕込みネタでアドリブの話のストーリーを描くのですが、これが結構難しくて、その地域の特長を的確に話せなくて四苦八苦します。毎回同行する中脇さんや藤倉さん、それに石川さんなどは毎回同じような話に耳を塞ぎたくなるのでしょうが、不平も言わず黙って聞いていてくれるのです。
昨晩は参加者全員に番茶とコーヒーのどちらかが振舞われました。コーヒーの飲めない私は番茶を選びましたが、感心なことに「私はブラック」などと英語で話しているのです。お茶の接待は何故か心が和みます。多分この地区のほのぼのとした雰囲気は、早めに来られた女性の方がお茶を沸かし、お茶を入れたからではないかと思いました。接待とはこのようなことを言うのでしょう。集会が終わり外に出ると外灯も殆どなく、人の数といい、明るさといい、昨日までいた東京新宿との余りにも大きい落差に驚きながら空を見上げました。明る過ぎる東京では決して見えない秋の夜空の無数の星が輝いて見えました。外灯はなくっても星が輝く街は素晴らしいと田舎のよさを再認識しました。
「外灯も 人の数でも 負けるけど 田舎にゃ星が 燦然輝く」
「集会の 合間におばさん 携帯を 両手で大事に 確認するよに」
「秋の次 冬冬の次 春という 暦は巡り 早冬近し」
「田舎道 人気感じぬ 工事中 臨時信号 車を止めぬ」