人間牧場

〇読書感想文

 先日私が学校評議員を務めている地元の双海中学校から学校便り「夕陽」第17号が届きました。忙しさにかまけて学校へもそんなに覗かないため、時々届く学校便りは貴重な情報源なので隅々まで丹念に読ませてもらっています。時々学校のホームページへもアクセスするのですが、ホームページは終ったことの報告が多く、これから起こるであろう出来事は意外と知ることができないのが少し残念です。そのことについてはアンケートに書かせていただきましたが、学校も限られた人員でやっているので中々手が回らないというのが正直なところのようです。第17号に近所に住む徳山栞奈さんの読書感想文が、愛媛県審査で優良賞に輝いたニュースと、全文が紹介されていました。栞奈さんは親の教育が行き届いているからでしょうか非常に礼儀正しく、子どものころから出会う度に私のような人間にでも、笑顔であいさつが出来る子どもです。いい文章だったので記録に留めたいと思いました。

 「希望を植えた男」(書名「木を植えた男」 著者ジャン・ジオノ)
 たった一つある泉にも水はなく、何もかもが枯れ果てているような荒地。そこに男は木の実を植えた。小さな袋に入ったどんぐりの中の大きくて無傷なものだけを残し、何万粒も一人で植えていく。その繰り返しだった。「自分の土地でもないところに、木を植えようとしていたことが、私には不思議だった。しかも、そんな荒地に植えたところで水分も十分に与えられるわけではなく、枯れてしまうだろう。それでも男は、もう三年も荒地に木を植え続けていた。十万個の種を植え、根づいたのがたった一万本だ。あとの九万本は無駄になったということだ。私だったら途方もなく悔しく辛い。長い年月をかけて植えたというのに、十分の一しか根が張らなかったら、やる気をなくすと思う。なぜ男にはそれができたのだろうか。その男は、家族をなくしてから孤独な世界にこもっていた。もし私が孤独な世界にこもってしまったら、と考えると恐ろしくなる。周りの人がいれば、希望もわくと思うが、一人だと、立ち直る勇気を失い、ただ生きているだけになってしまうかもしれない。

 しかし、男は、そこで思い立つ。「ただのんびりと過ごすより、何かためになる仕事をしたい。」私は衝撃を受けた。なんて人としてすごいのだろう。だが、心の底で、納得した部分もあった。自分のためだけに何かをすると、必ず限界が来る。しかし、だれかのためにしようと思えば、実力以上の力が出せたり一人では困難な目標を達成できたりする。私は、バレー部のキャプテンをしている。バレーは、個人の力も大事だが、何よりチームの結束力が重要だ。キャプテンとして、どうチームをまとめたらいいのか、どうすればチームの力を引き出し最高のプレーが出きるのか常に考える。すると視野が広がり、予想以上に動けたり、やる気が高まったりするのだ。
 そして男は木を植えた。「神の創造にも等しい仕事」という言い方で表現されているから、荒地とは真逆の土地になっているのだろう。見渡す限りに広がる緑が、眼の前に広がっていくような気がした。しかし、ここで問題が発生する。木炭ガスで走っていた自動車のために木材が大量に必要になり、伐採の手がつけられた。ところが、自動車道が遠すぎて、計画は中止になる。これは単なる偶然なのか。男が努力してきたことを無駄にしないために、そうなったのではないか。「努力は必ず実る」という言葉が当てはまると思う。孤独な作業も、努力を続けることで、救いの手や無言の応援があるということではないだろうか。

 私がこの話の中で一番心の中に残ったのは、「どんな成功のかげにも、逆境にうちかつ苦労があり、どんなに激しい情熱を傾けようと、勝利が確実になるまでには、ときに絶望と戦わないとならぬ」という言葉だ。成功は、簡単にはつかめない。苦労と絶望、苦しみを味わい、それを乗り越えないと手に入れられないことだと思った。勝利することも同じように、楽なことばかりでは、絶対に無理だと思う。この男も「孤独」から始まり、気の苗が全滅したり、絶望のふちに立たされたこともあったりしたが、それがあったからこそ、今の自分がいるのだと思う。
 「自然の森」を守ために、もくもく木を植え続けた男。彼は死ぬまでそれを続けた。本当に根性があると思う。「いまはすっかり変わっていた。空気までが変わっていた。」男が植えた木のおかげで、こんなに自然が変わるものだと思わなかった。自然の力はすごいものだと改めて感じた。自然環境は、人間自らが壊すこともできるが、作り出して美しく、すばらしいものにもできる。この地球上が破壊されるか、再生されるかは、人間の力次第だなあと思った。

 わずか八年間で、大地に生気とやすらぎが広がり、水が流れを取り戻し、見違えるほど、なごやかな心で生活を楽しむようになれたのは、一人の男のおかげだ。自分の肉体と精神の限りをつくして、荒れ果てた地をよみがえらせることは、人としてすばらしく、誇りに思う。どんなに辛くても、諦めかけようとしても、その苦労や努力は、必ずどこかで報われる。だから私も、一度始めたことや、やろうと決めたことは最後まで自分が納得できるところまで、粘ってやろうと思う。
 「限界を決めるのは自分」。途中でやめるのも自分、最後までやりとげるのも自分だ。全ての戦いは、孤独から始まる。だが、孤独には必ず光がさす。あの荒地に、緑が広がったように。この話の男のような人間に、私はなりたい。

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