〇狂わない時計
わが家にはそれぞれの部屋にそれぞれ時計が置かれています。私が子どもの頃は居間に一つだけの時計が柱にかかっていただけで、その柱時計もアナログなネジ巻き式で、ネジ巻きはもっぱら子どもの仕事だったため、ネジを巻き忘れて時計が狂ったり、誤って時計を動かし垂直が保たれなくなると時計は止まるので、あれこれ親に叱られる理由の一つになっていました。
昔の時計はそれゆえアバウトで、腕時計さえどちら様の時計も少しずつ誤差があって、遅れた理由を時計のせいにしたりしていた長閑な時代でした。ところがデジタル時計や電波時計が普及した現代では、電池切れさえなければ、5年に5秒以内の誤差程度ですから、これはもう正確という他はないのです。嬉しい反面、正確過ぎて少し物足らさえ思っています。
私は講演などの際残り時間が一目で分かる、文字盤の比較的大きな腕時計を使っています。講演が始まると腕時計を外して演台の見やすい部分に置き、お話を始めます。約90分の講演に熱が入り過ぎると時の経つのも忘れて喋りまくりますが、聴く人の身になって思えば「時は金なり」なので、できるだけ1分前に話を終えるようにしています。時計を外す癖がついていて、酒宴などでも無意識に時計を外して料理の前に置いてお酒を呑み、何度時計を忘れて帰ったことでしょう。
私が今使っている腕時計は、私の退職記念に次男がプレゼントしてくれたものです。これまで2度ほど電池を変えましたが、17年の時を経た今も正確に時を刻み続け、私と同行二人の旅を続けています。願わくば後23年、動き続けて欲しいものです。あと23年後私は100歳になる予定です。
「家の中 あちらこちらに 時計あり 電波・デジタル 狂いもなしに」
「正確も 過ぎると何だか 味気ない 一つぐらいは アバウト欲しい」
「腕時計 外す癖あり 酒宴席 忘れて何度か 騒動思い出」
「次男から 貰った記念の 腕時計 これから先も 同行二人」