人間牧場

〇心に残る一冊の本

 一昨日同居している小学5年生の孫奏心から、「おじいちゃん、一緒にお風呂に入ろう」と久しぶりに誘われました。小さい頃は2人の孫を風呂に入れるのが日課で、風呂の中で数を数えるのを覚えさせたり、かけ算を覚えさせたりもしましたが、今は中学1年の兄希心と一緒に一番風呂に入るため私の役目は終わっていますが、久し振りに見る孫の姿はまるで雨後の筍のように大きくなっていました。

私の思い出に残る一冊の本

 二人で湯船に浸かりながら色々な話をしましたが、「おじいちゃんは、今まで読んだ本の中で一番心に残っている本は何?」と尋ねられました。即座に「井伏鱒二という人が書いた『ジョン万次郎漂流記』という本だ」と答えました。小学校5年生の時担任の先生が誕生日の日に、新聞紙に包んでこの本をプレゼントしてくれたこと、主人公である土佐清水出身の漁師ジョン万次郎が、出漁中大しけに遭い乗っていた船が流され鳥島に漂着したこと、アメリカの捕鯨船に助けられ、ホット・フィールド船長と出会い、アメリカのフェアフェブンで勉強したこと、生まれた日本のことが忘れられず鎖国の国日本に帰ったものの捕らえられたこと、幕末から明治維新にかけて幕府に召し抱えられ、勝海舟や福沢諭吉とともに咸臨丸に乗って太平洋を渡ったことなどなどを話してやりました。

 かく言う私も運命こそ違え、漁師になるため水産高校の実習船愛媛丸でオーストラリア近くの珊瑚海まで、マグロを取りに出かけたこと、昭和の咸臨丸と銘打った総理府派遣第10回青年の船の班長として建国200年のアメリカやメキシコ・ハワイを航海したことなどを話してやると、「おじいちゃんは凄い」と言ってくれましたが、元はと言えば小学校5年生の時担任の先生が誕生日にプレゼントしてくれた、「ジョン万次郎漂流記」という本がベースになっているのですから、本の影響は絶大です。

 孫に本の話を聞くと、今はプログラミングの本に夢中になっているそうです。本は色々な空想をかき立ててくれます。私が空想したように孫も何冊かの本を読みながら、一冊の本に出合うことでしょう。楽しみです。孫と時々風呂に入ろうかな~。

「久方に 孫に誘われ 風呂に入る 本の話で 夢中になって」

「そう言えば 井伏鱒二の 小説が 私の心に 火をつけたよう」

「本を読み 空想巡らす 日々欲しい あくせく生きて 忘れかけてた」

 

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