〇只今桜前線北上中
南北に細長い日本中の、そこかしこに自生したり植えられている桜は、昔から「山は富士、花は桜」と言われるように、日本人が最も愛する花の一つです。日本中の人が冬の厳しい寒さに耐えながら、春の足音として桜の開花を心待ちにするのです。今年一番早くソメイヨシノが開花したのは愛媛県宇和島市でした。しかし残念ながら数年前宇和島の気象台が閉鎖されたため公式記録にはならず、高知県にその座を奪われましたが、開花記録を狙って長年活動を続けている宇和島市民のことを思えば、宇和島で3年間過ごした経験のある私としては、気象台発表だけが記録の今の方法を改めるべきだとも思うのです。
今年から道後公園の桜の下で焼肉をすることが禁止されたようです。一儲けを目論んだり焼肉野外パーティーを楽しみにしていた人たちにとっては、何ともやり場のない決定ですが、花見と称して花見もせず花より団子で、もうもうと立ち上がる焼肉の煙で一番迷惑をこうむるのはやはり桜の木ですから、せめて咲き始めて満開まで10日間、散り始めて葉桜になるまで10日間、合計20日間の短い花の命を考えれば、焼肉はどこででもできるのですから理解をして欲しいと思うのです。
私はこれまでまちづくりに深く関わって生きてきたため、公民館で一本、まちづくりで一本、21世紀えひめニューフロンティアグループで一本と、この40年ほどで指折り数えても数え切れないほど、沢山の桜を植えることに関わってきました。その中には枯れたものや老木になって、寿命を終えようとしている桜もありますが、これからもいささかなりとも桜に関わって生きようと思っています。
先日子ども体験塾の子どもたちが、国道沿いに植えた桜に巻きついたカズラを切る、ボランティア活動に参加してくれました。私たちはこれまで桜を植えることだけに重きを置いていましたが、植えた桜を保存する活動はおろそかというよりまったく無頓着だったようです。20年前に植えた国道沿いの桜は、もう成木に育っていますが、ほおっておくとカズラの旺盛な生命力の餌食になって枯れてしまうのです。私は軽四トラックに剪定ハサミを積んで持ち歩き、時々気がついた場所で人知れず桜に巻きついたカズラを切っていますが、一人の労力では中々追いつかないのです。まあひとはどうであれ、自分の力で一本の桜を救う気持ちで頑張ろうと思っています。
先日高知県須崎市に住む土居さんに出会いました。中土佐町で開かれた生涯学習推進体験の会場へはるばるやって来てくれたのです。土居さんとは彼が須崎市の社会教育課長をしていた頃招かれ知り合いました。彼は退職後地元から請われて市議会議員になっていますが、彼の夢は体の不自由な娘さんと桜前線を追って日本全国を旅することだと聞いていました。まだその夢は実現していないようでした。
今年も桜の咲く季節がやって来ました。人間牧場に植えた千本桜の森づくり事業の標準木である枝垂れ桜も、綺麗な花を咲かせ満開を迎えています。行く春を惜しむようにしないと、散り際のよい桜を楽しむことはできません。幸せなことに私は、自分で植えた桜をいっぱい見れる幸福者です。今年も妻と2人で桜を楽しむ小さな旅をしたいと思っています。
「これまでに どれ程桜 植えたやら 枯れたりカズラ 餌食もあるが」
「書斎から 見える遠望 山桜 今年も咲いたと 言ってるようだ」
「雨嵐 春は桜の 天敵に 悩まされつつ 花を眺める」
「不自由な 娘を連れて 桜追う 旅に出たいと 言ってた言葉」