〇道後温泉祭り
私が愛媛県青年団連合会の課長をしていた若い頃、東京の日本青年館で開かれた、全国青年問題研修会に他の30人の青年を連れて行った折、自己紹介で「愛媛県」と言えば「愛知県に間違われ、「松山」と言えば埼玉県東松山と間違われたものでした。仕方がないので「道後温泉の近くです」といえば、殆どの人が「いい所」とか、「夏目漱石の坊ちゃんなど有名な」と言葉が繋がりました。「愛媛県」より「松山」より、「道後温泉」は当時から、ひょっとしたら今でも有名な存在のようなのです。
自分の町を紹介するのに、そんな有名な「道後温泉」をこれまで随分枕詞に使かわさせてもらいましたが、いざ道後の込み入った話になると、国宝の道後温泉本館くらいなもので、まったく知る知識がないことに今頃になって気がついています。聖徳太子も時の皇族も入浴し、正岡子規や夏目漱石などの文人墨客に愛されているにもかかわらず、全国的に観光地としては三ツ星の世界だというのにこの醜態です。
娘家族は道後温泉の近く道後緑台に住んでいますが、一昨日五歳の孫尚樹が道後温泉商店街を道後温泉祭りで踊り子となって練り踊るというので、妻に誘われノコノコと出かけて行きました。
6時過ぎ娘のマンションに到着し、一緒に夕食をご馳走になりながら、浴衣と法被に着替える様子を見ました。いやはや子どもの浴衣に法被姿は可愛いものでした。孫尚樹はこの日のために3日間も踊りの練習に出かけたそうで、少しだけ恥ずかしそうに踊りを披露してくれました。そのうち仲間が迎えに来て出かけるので、私たち夫婦も歩いて出発地となる道後温泉時計台の下まで出かけました。
やがて午後7時になると孫たち子ども連が先頭を切って踊り始めました。道後温泉音頭は実にゆっくりのんびりしたリズムで、商店街を寝るのに時間もかかる有様でした。
私と妻は2時間もかかるという踊りに飽きて、途中すぐ近くの椿の湯で40分ばかり温泉を楽しみました。道後温泉の湯質は天下に名高い源泉かけ流しのお湯で、肌にしっとりまとわりつき、すっかり湯上り気分となりました。温泉を出て孫たちの後を追いましたが、いつの間には大人の沢山の連が出て、本館前で踊りが披露されていました。
私たちは早々にお暇して家路を急ぎましたが、道後温泉祭りすら今まで一度も見たことがなかったので、孫の出演も絡んで妻は満足の手合いでした。
「どちらから? はい愛媛県 松山の 近く言っても 愛知?埼玉?」
「わが町は 道後温泉 すぐ近く いいとこですねと 言葉繋がる」
「近くでも 知らないことが 多過ぎる もう少し勉強 せずばなるまい」
「五歳孫 浴衣に法被 凛々しくて 爺婆馬鹿に なりて輪の中」