○母ちゃんの夢を見ました
昨日の夜母ちゃんの夢を見ました。私のような田舎育ちの人間は母のことを都会の人のようにお母さんとか母上なんて格好よく呼ぶことはせず、物心ついてから死ぬまで「母ちゃん」と愛情を込めて呼んでいました。その母ちゃんが昨晩夢に出てきたのです。夢に出てきたシーンはお節句、母ちゃんがせっせと巻き寿司を巻いたり羊羹を作っていました。多分4月3日の節句弁当を作っている光景だったと、夢から覚めて思いました。私たちが小さい頃は戦後の物の不自由な生活でしたから、盆や正月といったハレの日はご馳走が食べれるとあって何日も前から指折り数えてその日を待ちました。特に節句は格別で重箱に巻き寿司とオカズが2段重ねで自分だけの弁当が作られるのですからこれ以上の喜びはありません。
私たちが寝ている夜の間に母は台所に立って様々な料理を作っていました。朝になると気のあった友達が数人迎えに来て、風呂敷包みの弁当を提げて歌いながら山道を登り、数日前から作っておいた陣地のような所で弁当を開けるのです。一斉に開けた弁当を見てみんなの口から歓声が上がり、母ちゃんに感謝しながら美味しそうに食べたものでした。その弁当の美味かったことはこの歳になっても
忘れるものではありません。
母ちゃんが亡くなったのは2001年10月4日のことですからもう既に5年余りが経過しています。私の人生で最も悲しかったことはと問われたらやはり母ちゃんの詩を思い出すでしょう。私の誕生日の明くる日に80歳で亡くなったのも何か因縁めいていますが、亡くなったはずの母ちゃんが時々夢に出てくるということは、私の心の中に今でもしっかりと生きているということでしょう。死んだ後に比べれば母ちゃんが夢に出てくる回数は極端に減って、最近は殆ど夢への出演がなくなっていましたが、夢から覚めた今朝は改めて仏壇に向かい線香を手向けて祈りました。
「心が安定していないと夢を見る」のだそうです。そういえば度々夢を見た若い頃のように夢はみなくなりました。その文歳をとったのか心が安定しているのか分りませんが、次に母ちゃんが夢に出てくるときは必ずセリフを忘れないようにしたいものです。どんなセリフを用意しようかとふと思いました。「母ちゃんみんな元気だよ」「父ちゃんも母ちゃんが死んでから寂しそうだけど何とか元気だよ」「孫も元気、一心が結婚しました。いい嫁さんです」「母ちゃんがせっせと耕していた池久保のみかん畑には人間牧場を立てました」「もう直ぐお節句です。母ちゃんの巻き寿司を思い出しました」なんてセリフだろうなあ。
「母ちゃんが 巻き寿司巻いてる 夢を見た 節句間近な 春の眠りで」
「一言も 言葉交わさず 目が覚めて 線香手向けて 母への祈り」
「ゴミを出す 通りかかった 野良犬も 親子仲良く 畑中ゆっくり」
「今度見る 夢の続きは セリフ言う つもりで用意 言葉数々」