〇ひこばえの田圃
最近は稲刈りの時期が場所によってまちまちで、台風の被害を避けるように早い所は8月のお盆が過ぎた、まだ残暑の厳しい頃に刈りますが、用水の関係で田植えが遅いところは、これからが最盛期の所もあるようです。勤め人は土日の休日を当てにし農業をしているのに、台風やこのところのぐずついた天気に翻弄されて、稲刈りが出来ない嘆いている人も多いようです。
青田が黄金色になり、稲を刈った田圃は丸裸になりますが、暫くほおっておくと稲の切り株から芽が出てきます。これを稲のひこばえと言うのだそうですが、ひこばえはあっという間に青田になり、まるで稲の苗を植えた初夏の早苗と見紛うようになります。やがて何日かすると穂ばらんで、時にはモミになることだってあるようです。聞くところによると水を張り肥料をやれば少しはお米が獲れるそうですが、お百姓さんもそんな暇はないので、ほったらかしにされ、やがて枯れ行く運命にあるようです。
私は毎年このひこばえを数株いただいて刈り取り、大事に乾燥させてしまって置き、お正月の神棚用海老注連縄を作っています。長さや編む太さが丁度いいし、稲穂までついていて結構目出度く豪華な出来栄えになるのです。最近はこのひこばえの稲穂がイノシシの格好の餌になって、イノシシが増えるというので刈り取られたり、除草剤をやって枯らしてしまう人もあると聞きました。刈り取った死んだはずの稲の切り株から芽が出て、青田になるのも不思議で、凡人の私には理解できませんが、ひこばえもやがて黄金色になり、殺風景な田舎に冬を迎えるまで彩りを添えてくれるのです。
「稲刈りの 終った田んぼ いつの間に 苗を植えたと 見紛うほどに」
「切り株の 根から芽が出て 青田なる 不思議な現象 ひこばえという」
「何株か いただき刈り取り 年末に 神棚用の 注連縄作る」
「ひこばえが 田舎の風情 思うのは 私だけかも 知れない思う」