〇私の人生に大きな影響を与えた一冊の本(その3)
私のような凡人は、他の人のように知識を得るため難しい本を沢山読んだ訳ではありませんが、その少ない本の中でも「大学」という本は、私の人生に大きな影響を与え続けています。陽明学の始祖といわれる中江藤樹は、11歳の時この本を読んで感動し、立派な人間になろうと志を立てたそうですが、私は恥ずかしながらこの本を読んで目覚めたのはつい最近のことです。
「大学という本には様々な教えが書かれています。「天子自り以て庶人に至るまで、壹に是れ皆身を修むるを以て本と為す」。つまり天子から庶民に至るまで自分の身を治めることが基本であり、自分を修めるという根本を疎かにして家庭や国家は治められないというのです。また「物に本末有り、事に終始有り、先後する所を知れば、則ち道に近し」は事には必ず終始があって、何を先にし、何を後にするかをわきまえ実行すれば、人の道を踏み外すことはないとも説いています。
最近中江藤樹を書いた本の中に「当下一念」という言葉を見つけました。今やろうとしている一念を続けるという意味ですが、人の心は弱いもので初志を貫徹しようと思っても、世情や人の言葉に惑わされて心が揺らぎ、ついには何もしないまま終ることが多いのです。大学の本を読んで開眼した中江藤樹も二宮金次郎も当下一念の人であり、その言葉に触発されて人生を生きた人も当下一念の人なのです。
私たちは文明の世の中に生きているゆえ、大学という本も安易に手にすることができるし、その教えを分りやすく解読した資料だって手に入るのですが、知っているだけでは何の意味もなしません。むしろその教えをどう日々の暮らしの中で具体的に実行に移すかが大事なのです。願わくば実行によって勝ち得たプロセスと成果を多くの人に話し、心の扉を開いて実行に移し成果を得る「知行合一」の人間を育てるような人になりたいものです。
「大学と いう本手に入れ 朝夕に 読み方解説 紐解きながら」
「知っている だけでは何の 価値もない 自分の生き方 変える努力を」
「自分だけ 実践よりも 他の人の 心手足を 動かす人に」
「鏡見る 写った顔は 本物と 同じだけれど 実は虚像だ」