〇歳をとるということ
「古来稀なリ」という古希を迎えると、何か年寄りになったような気分になるから不思議です。それもそのはず、私と同じような年代の人は既に、老人クラブに入会したりグランドゴルフに通ったりして、高齢を謳歌しているようで、私にもそうしたお誘いがじわじわと近づいているようですが、まだまだと見栄を張るかのように突っぱねています。昨日黒山登山に出かけ、往復2時間の山道を歩きましたが、他の三人の若い人に負けないほどの健脚に、少し自信のようなものを感じ、自宅に戻って妻にそのことを話すと、「それを年寄りの冷や水というのよ」と軽くあしらわれてしまいました。
先日妻が私に着せるため、ピンクがかった服を買って帰りました。私はそうした派手な服はこれまでも着たことがないので、「要らない」と少し不機嫌になりました。「歳をとるとパジャマや普段着でウロチョロする人が多く見受けられるがみっともなく、歳をとればなお更少しお洒落をすべきだ」と妻は言うのです。一利あるとは思ってみても、流石にピンクのシャツを着るほどお洒落な人間ではないのです。
そういえば先日松山にある星ヶ岡温泉に出かけた折、脱衣場で八十歳を越えたおじいさんが着替えをしている姿を見ました。そのおじいさんは何と真っ赤なボクサータイプのパンツをはいていたのです。
脱衣場で着替えをしていたお客さんの目が、一斉にそのおじいさんのパンツに釘付けになりました。当のおじいさんはさも「どうだ、参ったか」てな感じで得意顔になって、脱衣場をウロチョロしていました。いやはや驚きで、私など見ているだけでも恥ずかしくて目を覆いたくなるような光景でした。
私のような古いタイプの人間は、ある種自分の地味さを歳のせいや、田舎暮らしのせいだと思っていますが、赤いパンツのおじいさんほどではなくても、もう少しお洒落な身だしなみをしなければと、少しだけ反省しました。先日思い切って妻が買って来た、ピンク系のシャツを来て外出をしました。出会った人が「進ちゃん、今日は偉いおめかしして何処へ行くの!!」と皮肉めいて尋ねられましたが、「進ちゃん、今日は格好いいねえ!!」とも言われました。まあいいか・・・。
「温泉の 脱衣場赤い パンツはき これ見よがしに 見せるじいさん」
「ピンク系 シャツを私に 着よという 流石の私 嫌だとぐずる」
「歳とれば 地味より派手が 一番と 思ってみるが 私にゃ出来ぬ」
「体力じゃ 若い人には 負けるけど 気力は今も 年寄り冷や水」