〇真っ赤な椿の花が届く
わが家の家の周りや、人間牧場には瀬戸内海に面した北向きの半日陰の気候が適しているのか、ヤブツバキの花が至る所に見られ、気温の上昇とともにその花を散らしています。人知れず咲き人知れず散るヤブツバキは、野生種ゆえに派手さこそありませんが、私が大好きな花のひとつなの、折に触れ咲いた花を愛でたり、落ちた花びらさえも愛おしく、思わず車を止めて眺めたりするのです。
近所にツバキの会に入会している奥さんがいます。ご主人は元京都府警の警察官でしたが、退職と同時に近所に土地を構え、新しい家を建てて引っ越して来られましたが、畑のような広い敷地には至る所にツバキの花を植え込み、引っ越して5~6年だというのにあっっという間にツバキ園を造っているのです。
奥さんは多趣味で俳句やお華、お茶などをたしなまれいわゆる洗練された京言葉の似合う風流人です。無骨で無芸大食程度の私なので、住んだり活動したりする世界が違うと思いきや、同じ組内ということや私のウォーキングパラダイスの途中に家や菜園があることもあり、四六時中顔を合わせ他愛のない会話を繰り返しているのです。先日はウォーキングの途中で出くわし、ウォーキングを止めて咲いているツバキの花を見ながらお茶とお菓子をいただきましたが、いやはやツバキには詳しくて、私の思考回路が少し混乱したような雰囲気でした。
昨日の夕方自宅のチャイムが鳴りました。玄関先に出てみるとツバキの鉢植えを持った奥さんが立っていました。「ツバキが綺麗に咲いたので差し上げます」と真っ赤な2輪の花の咲いた鉢植えを持参してくれました。私がお茶のお礼にと人間牧場で採れた蜂蜜の小瓶を2本差し上げたお礼のつもりだったのでしょうが、歳相応の年齢とはいえ、女性に予期せぬ花を貰うことなど殆どないため、少し嬉しくなりました。
鉢には白いセルロイドに「日光(じっこう)」と名前が書かれていました。早速書斎に持ち込み書斎のレースのかかった丸い机の上に置いて、先日奥さんから聞いたツバキの花の話を思い出しながらまざまざと見つめました。いやはや品のある見事なツバキでした。
桜が咲けば桜が一番と思い、アジサイが咲けばアジサイが一番と思うほど、私は顔に似合わず花が大好きで、菜の花や桜、アジサイ、水仙、酔芙蓉などの花を町内のあちこちに植え込んできました。今や水仙も菜の花も酔芙蓉も愛媛を代表する風物詩になって多くの人が花をめでにやって来るのです。
ふと自分の家の花を思うと、あれ程気狂いのように育てた皐月類も、仕事に夢中になり過ぎて全滅させてしまい、少し自戒の念に駆られますが、それでも100メートル以上にわたって間もなく咲くであろう平戸つつじの帯だけは残っているのですからまんざら捨てたものでもないようです。
これからも近所の人と花談義をしながら余生を楽しみたいものだと思っています。
「ご近所の 奥さんツバキ 持って来る いやはや嬉し 花プレゼント」
「人は皆 花に心を 動かして 思わず心 和み幸せ」
「日光と 書いてじっこう 読むという 凡人私 それさえ知らず」
「そこここに 風流人は いるもので 目と鼻の先 いいとこ見っけ」