〇鳥取県日南町への旅(その2)
「鳥取はもう冬だから暖かくして出かけて下さい」と、妻が用意してくれたダウンのコートと手袋を持って、師走に入って間もない12月2日、早立ちで鳥取県日南町へ向かいました。朝6時13分松山駅発の特急しおかぜに乗り込み、インターネットで調べた乗り継ぎ予定を指でなぞりながら、のんびりゆっくりの列車旅を久しぶりに一人楽しみました。公共交通機関を利用すると途中ウトウトしたり、読書を楽しむもう一つの楽しみがあるので、見慣れた車窓に広がる瀬戸内の光景を身ながら瀬戸大橋を渡り、岡山で特急やくもに乗り換えて生山駅を目指しました。
特急しおかぜは殆ど満席でしたが、日曜日だというのに特急やくもは私の乗った自由席はガラガラで、これもまたよしと思いつつ、1時間半の殆どを読書に耽りました。今回の読書は木になるカバンに忍ばせている「夕日徒然草」の再読で、時折読んで記憶を蘇らせておかないと、落伍の高座が務まらないのです。
倉敷から分かれた列車は高梁川と国道180号に沿うように備中高梁、新見と進みましたが、進むにつれて、木々の紅葉も葉っぱを落とし、新見あたりからはもう冬枯れの木立となっていました。川幅が段々狭くなり、幾つものトンネルを抜け鉄橋を渡りました。分水嶺あたりの長いトンネルを抜けると、川の流れが逆に流れているよな錯覚を覚え、列車のきしむ音が少し軽やかになったような気がして、いよいよ目的地に近づいたことを実感しました。
車掌さんのアナウンスが流れ、10時38分に生山駅へ予定通り到着しました。昇降客は私一人で、改札口へ向かうプラットホームのから見える山々には昨夜降ったであろう雪が白く積って、冬の厳しさを感じさせてくれました。生山出身という県庁の課長補佐さんに出迎えてもらい、総合文化センターへ直行しました。この日会場では食のバザールが賑やかに開かれていましたが、控室へ荷物を置いてレストランで、少し早めの昼食をいただきました。ショウガ焼肉をメインにしたランチはボリュームがあって、大満足の手合いでした。私はコーヒーが飲めないので紅茶をいただきながら、スタッフの皆さんと和やかに懇談した後バザール会場を一巡し、顔見知りの方々にあいさつをしたり、販売している手作りの食べ物を見て回りましたが、品数も豊富で工夫の跡が伺えました。
生山の駅前周辺や役場周辺を見渡すと、人口5千人足らずの町にしてはやたらと公共施設が目に付きます。文化センターも美術館もあって、岡山と米子の中間に位置するため特急まで止まるのですから、これはもう別格な町なのです。このまま人口減少が進めばこれらの公共施設の維持管理も大変だと、人ごとながらに思いました。この危機から脱皮するには、やはり交流人口を増やして行かなければなりません。さてそのためにはどうするか、ここが智恵の出しどころのような気がするのです。幸い有り余るほどの地域資源もあるようなので、目標を定めて頑張って欲しいと私の講演を締めくくりました。いつの世も人が輝けば町が輝くのです。
「県境に 近い生山 駅に降り 雪化粧した 山々望む」
「この町を 含め鳥取 幾度なく 訪ね歩いた 懐かしきかな」
「日本の 田舎危ない 人が減り 少子高齢 波がまともに」
「定住は 増えないけれど 交流は やればできると 思いも新た」