人間牧場

〇上がり蚊と名残り蝉

 台風の行方を気にする私たちをまるであざ笑うように、大東島付近でぐるり一回転しながら居座る台風15号の影響で、今日はかなり蒸し暑い一日となりました。最近まで虫の声が賑やかになったり、名月の話題で秋が近づいた感じがしていましたが、この2~3日は梅雨を思わせるようなかなり激しい雨が降り、加えて蒸し暑いため、上がり蚊というのでしょうか、網戸を越えて薮蚊が台所まで進入し、腕や首筋を刺されてしまいました。夕食時妻は早速蚊取り線香を焚いてくれましたが、刺された後がかゆくて、虫刺されの薬を塗ってもしばらくの間かゆみが収まりませんでした。

 いつも思うのですが、あんな小さい蚊なのに頑丈な皮膚を何故刺せるのか、不思議といえば不思議です。手で叩くといとも簡単に潰せる蚊といい、強力な毒針を持っているミツバチといい、また先日刺されたムカデといい、私たち人間はあんな小さい虫にさえも叶わないのですから大したことはないのです。
 ビールを飲んでいた昔は、蚊がビールの匂いを好むのか私の元へ蚊が集まってきていました。ところが酒を止めたつい最近は、蚊の方が寄り付かなくなり、傍にいる妻が標的にされているようです。蚊にさえ歳をとった私は見放されたようで、少々寂しく感じます。一方妻を狙う蚊はオスではないかと邪推したりするのです(笑い)。

 セミの鳴き声もこの雨と夏の終わりの気候ゆえ、もう終わりだと思っていたのですが、今朝裏山の森林の向こうにある雑木林から、それは賑やかにセミの鳴き声が聞こえてきました。まさにセミの名残鳴きのようで、少し物悲しい声に聞こえました。
 セミは「地中7年地上7日」といわれるように、一生の殆んどを土の中で暮らします。地上に出て僅か7日しか生きられない短い命を燃やそうと、あらん限りの力を振り絞って鳴くセミの声を、遠く近くで聞けるということは、まさに奇遇で運命的なことかも知れないのです。もうセミの鳴き声も聞き納めで、来年の6月まで封印されてしまうのですから、しっかりと傍耳を立てて聞いてやりたいものです。

  上がり蚊に さえも私は 見放され 妻に言い寄る オスの蚊かしら」

  「土の中 七年過ごし 地上では 僅か七日の 命燃やさん」

  「来年の 夏まで封印 セミ時雨 鳴き声ゆるり 聞いてやろうか」

  「台風が あざ笑うよう 同じ場所 のらりくらりと 本土うかがう」

 

   

 

 

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